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「あと片栗粉だけだったんだから、ちゃんと健斗が作った麻婆豆腐よ。それに……」 「健斗! 大丈夫か!」 「ほら、もう来た。やけどしてる健斗に作らせたら私が怒られちゃうわ」  ガラガラピシャンと勢いよく開いた扉には江彦が野球の練習着のまま立っていた。江彦が来たことに驚いているのは健斗だけで、あとの部員は「今日は早かった」「新記録じゃない?」とまるで来ることがわかっていた口振りだ。 「ひこ! え、練習どうしたんだよ!」 「ちょっと抜けてきた……から大丈夫だ。どこだ、ほら見せてみろ」  大丈夫だと言い張る健斗をまるで信用していない江彦の脳天を橘の手刀が直撃する。健斗を横抱きにして保健室に走り出さん勢いだったので橘のストップは健斗にとってもありがたいものだった。

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