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先き立つ者 9
「へぇ……あんた、そっちだったのか?」
「ち……違う、俺は……」
「キツイだろ? 早く出したいんじゃねえのか?」
雪耶は俊幸のファスナーを降ろし、粘り気を帯びた下着の上から、その形をなぞった。骨張った長い指で陰(いん)嚢(のう)を揉みほぐし、いまにも放出せんと沸き立つ白濁の勢いを助長させる。もう片方の手は陰茎に添えられ、ゆっくりと上下に扱き始めた。
「ん……っつ……う、ぅん……ぁ、は……っ」
俊幸は快感に喘ぎ、舌を突き出して甘い刺激を貪った。そしてその快楽を与える相手が実の息子だという事実が、俊幸の背徳心を揺さぶり、さらなる高みへと昇りつめる足がかりになる。
「気持ちよさそうだな、父さん」
「は、っあ、もう……い……っ」
「その調子じゃ、もう少しくらい我慢できるよな?」
「な……っああ!」
不敵に笑った雪耶はぬめった下着の隙間から俊幸のものを取り出し、そそり勃つ幹の根元を余ったビニール紐で結わえた。
「やめ……っ、外せっ……!」
「嫌だね」
割れ目から滲み出る我慢汁をそっと舐め、雪耶は自身の前を開けて、ドクドクと脈打つ怒張を取り出した。俊幸のものを扱いている間に興奮したのか、雪耶のものは平均的なものより大きく成長していた。
「口を開けろ」
「……無理だ……そんな、入らない……っ」
「ずっとしゃぶりたかったんだろ? 遠慮するなよ」
雪耶は俊幸の胸の上に移動し、醜悪なその先端を堅く閉ざされた口元にあてがった。
「早く開けろよ。それとも無理やり突っ込まれたいのか?」
雪耶の目は本気だった。これ以上苛立たせてしまったら、本当に犯されてしまうかもしれない。
「早く」
急かす雪耶の声を受け、俊幸はようやく口を開いた。カタカタと小刻みに震える歯をどうにかして当てないように、自分自身へと言い聞かせる。
中ほどまで咥えたところで、俊幸は噎せた。口いっぱいに広がる雄の臭いに、生理的な嫌悪感が湧き、固く閉じた両目から涙がこぼれた。
「うぅ……ぐ……っ」
「動くぞ」
「うぐっ!」
激しい律動が始まる。雪耶は俊幸の髪を掴んで固定し、快感を貪るように、何度も何度も腰を押しつけた。口の中の質量はどんどん嵩を増していき、俊幸の呼吸を圧迫していく。
雪耶の顔が徐々に紅潮していく。はっと思ったときにはすでに、俊幸の口腔にねっとりとした苦味が広がっていた。喉の奥に叩きつけられたそれは、紛れもない雪耶の欲望の証だった。
性器が引き抜かれた瞬間、俊幸は横を向いて粘ついたそれらを吐き出そうとしたが、一足先に雪耶に牽制された。
「出すなよ。全部飲め」
口元を手で覆われ、さらに鼻も摘ままれてしまう。息苦しさに負けた俊幸は、観念して口腔内に残った精液をごくりと飲みこんだ。
その様子に満足した雪耶は、わずかに口の端に残ったものを舐め取り、上体を起こした。そして気持ち悪さにえづく俊幸を見下ろし、宣言した。
「あんたが俺にあんなことをした理由を答えるまで、俺はあんたを痛めつける。また明日も来るからな」
俊幸の拘束を解き、身繕いを終えた雪耶は不吉な予告を残してアパートを去っていった。
「くそ……っ」
後に残された俊幸は、震える手で自身を縛る紐を解き、黙々と自慰に耽(ふけ)った。
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