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先き立つ者 13

 ずぼりと性器を引き抜いた雪耶は、ぬめったそれをティッシュで拭き取り、自身の後始末をした。  一方、俊幸は布団に仰向けになったまま、ほとんど身動きが取れなかった。肉体的なダメージよりも、精神的なダメージが俊幸を打ちのめした。  とうとう生身で繋がってしまった。実の息子に犯され、中出しを許してしまった。ついに雪耶は俊幸と同じ道を辿ってしまった。とうてい許される行為ではない。だが叱責できる立場でもない。  その上、雪耶に陵辱され、暴力的な行為を強いられたはずなのに、俊幸はそれらの行為の中に、被虐的な悦びすら感じるようになっていた。これから先、どうやって雪耶と向き合えばいいのかわからない。少なくとも、雪耶に手を出してしまったあの日から、普通の親子に戻ることは不可能なのだが。  様々な想いが錯綜する脳内だけでも休めようと、俊幸は目蓋を閉じ、束の間の現実逃避に走った。 「父さん?」  身支度を整えた雪耶が声をかける。しかしいまの俊幸には返事をする余裕はない。 「寝たのか……」  俊幸が答えないでいると、雪耶は父親の身体に覆いかぶさり、その平らな胸を撫でた。 「なあ、どうして俺に同じことをしたんだ……?」  組み伏せたまま俊幸の胸に顔を伏せた雪耶は、消え入りそうな声で尋ねた。 「俺はそんなに憎い息子だったのか……?」  違う、お前を愛しているからだ。声に出せない想いをそっと胸の内で明かし、俊幸は身体に伝わるぬくもりを味わった。

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