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梅雨の君 3

 その電話はイヤにどんよりと曇った朝に着信した。父が突然倒れ入院したという知らせだった。電話をかけてきた母によると、父の病状は深刻なようで、家業を営んでいる俺の実家はこれからてんやわんやになる事が明白だった。 母から帰ってきてほしい、とはっきり告げられる。俺が就職した時、とても喜んでいた母が決意した口調で打診してくるという事の重みを俺はこの時しっかりと感じていた。決して強制ではない。分かっていたけれど、母の思いと迷いはすぐに俺とリンクした。  その日は水曜日だった。茫然自失のままその日の仕事を何とか済ませ、会社の上司に現状を相談する。入社した時から親切にしてくれた優しい上司はすぐさま長期休暇扱いにしてくれた。 「先の事はじっくり考えたほうがいい。時間がかかったとしても、ちゃんと待ってるからな」  いつもの仕草で上司に背中をポンと叩かれて、そんなふうに励まされる。社会人になって年数が浅いというのに、俺はとても恵まれた環境に居るのだと強く実感する。本心を言うならば、俺はまだこの会社で働きたい。働いていたい。そんな思いが滲んできて、俺はつい涙を零してしまった。

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