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梅雨の君 6

ピーーー…  終了のブザーが鳴る。取り込んだ洗濯物を、今夜は畳まずにそのまま袋に詰め込んだ。コインランドリーの入り口に赤いテールランプが反射する。黒い軽自動車が見えた。十二時、いつもの装いで彼が車から降りてくる。去る俺と入ってくる彼と…。ガクガクになりながらすれ違いざまに振り絞った最初で最後のセリフは「使って」だった。こちらを見る彼の顔に視線を向けることは出来ないまま、彼の手にチャージカードを差し込む。反応は待たず、逃げるように雨の中へ飛び出して高揚したまま帰宅した。  それからどうやって実家まで帰ったのか、あまり覚えていない。それほど俺はいっぱいいっぱいだった。  彼はその後どうしているのか、俺がした事にどう感じたのか知る事はできない。挟み込んできた手紙は「作業着の貴方へ」と宛てた。連絡先は書かなかった。ただ、共に過ごした静かな時間への感謝と「好きでした」とだけ書いて終えた。

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