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第7話 ベビーピンクの誘惑

もう何分くらいこうしているだろう。 舌と舌を絡ませ、吸い上げ、涼太の口の中の壁を何度も俺の舌で優しくなぞる。 その間、俺はずっと涼太の閉じられたままの瞼や微かに震える長いまつ毛、それに沿うようにしてついている雫、それら全てを綺麗に纏めている白い肌から目が離せずにいた。 「う・・・っ、は、あ・・・ぁ」 時折、喉の奥から艶を帯びた苦しそうな声が漏れる度、涼太に酷くしてしまいそうな自分と戦っていた。 「もう、キスは覚えたか?」 唇を離し涼太に確認する。 「う、ん、たぶん・・・」 今にも零れそうな涙を溜めた瞳を揺らしながら涼太が答える。 ああ~、この日を想定して付き合ってもいない女達とキスしまくっておいてよかった! 今まで育てて来てくれた女達に心から感謝! 涼太をこんな顔にさせることが出来たのも彼女達がいたおかげ、ほんとにありがとう! そして俺を、女に不自由しない高スペックイケメンに産んで育ててくれた両親、ありがとう! さて、問題はここからだ。俺の経験はカテキョの足立先生にリードしてもらったあの一度のみ。AVとネットからの情報で、ある程度の予習はしてあるが、相手が涼太だと上手くできるのか不安しかない。いくらイケメンといはいえ、エッチの経験不足は完全に俺の自己責任だからなあ。 本能に従ってやっちまうと、涼太の体、ぶっ壊しそうだし・・・ にしても、あんだけ無表情でエロ動画観てるこいつがキスだけでこんだけ泣きそうになってんのはなんなんだよ。これからどんな事するのか、おおかた予想はついているはず・・・ 「これからエロい事、すんだよな?おっぱい揉んだり、弄ったりすればいいんだろ?」 おいおい、色気ねえ事言うなよ、俺がこんなに悩んでんのに、泣きそうになってるくせに無神経ヤローは健在か。余裕だな。あくまで俺とは、ドス黒との本番の前の練習、でしかないって事か・・・ ぜってえ泣かせてやる そう決めた俺は、涼太を引き寄せて細い首筋に唇を沿わせる。びくん、と体を強ばらせるのがわかる。 もしかして首、弱い? 「うあ・・・」 甘噛みすると思わず声を漏らす涼太。 「ちょ、待って!また噛み跡つけんじゃねえ!」 「わかってるよ、うるせえな、また口塞がれてぇのかよ」 俺の一言に、ぐ、と押し黙る涼太。クッソかわいいな! 再び白い首元に唇を寄せて、鎖骨のあたりからゆっくり舐め上げる。 「あ、それやだ・・・っ」 間違いねぇ、こいつの弱点は首だ! 涼太の弱い所を見つけた俺は天下でも取ったような気分になった。 首筋に繰り返し舌を這わせると 「あ、あ、やめっ・・・あっ・・・ちょ、あ、」 たちまち涼太の白い肌が紅く染まり、声を押し殺す事もできずに、体が小刻みに震え、うまく力が入らない手で俺の体を押し返そうともがく。 「涼太、知ってる?こういう時の、やめて、いやだ、って、もっと、って意味らしいぞ」 俺が言うと、涼太は耳まで真っ赤にして両手で顔を覆った。 「いつものポーカーフェイスはどうしたよ?これくらいで顔真っ赤にしちゃって情けねえな、そんなんでちゃんと女抱けんの?」 「うっせぇ、バカ!顔見んなバカ!」 ったく、かわいいんだかかわいくねぇんだか。 それなら・・・ 座っている涼太をくるっと反転させ後ろから抱きしめるかたちで自分の両腿の間に挟み、両腕で囲った。 「顔、見られたくねえんだろ」 背後から耳元で囁くと、涼太は自分を守るかのように体を小さくする。 「てめえこそなに興奮してんだよ、当たってんだよ、なんか硬いやつが!」 う・・・やべえ、バレた。 「不可抗力だ、気にすんな」 「男相手に勃つとか、変態かよ」 「うっせぇ、おまえの反応がエロいからだろ!」 男に勃つんじゃねぇ、おまえだからだよ、と付け加えられない、情けない俺・・・トホホ。 「エロは好きだけど、オレはエロくねぇ!」 恥ずかしさからなのか、涼太は膝を抱えて体を丸める。 俯いた事によって無防備になった項に舌を這わせる。 肩を震わせて声が出ないように堪えている涼太に胸が締め付けられた。 誰にも渡したくねぇ 涼太への独占欲が高まった俺は、涼太から見えない項の下あたりの肌を吸い上げて紅い跡を付けた。 「・・・っ」 涼太から小さく声が漏れたが、跡を付けられた事には気付いていないようだ。 涼太の肌が、自分がつけたしるしで紅く染まっているのが、さらに俺の気持ちを昂らせた。 項に何度も、短い音をたてながらキスを落とす。 「やらしい音、立ててんじゃねぇバカ」 涼太の精一杯の憎まれ口に反抗するかのように、静かな部屋に響く音をたてて項に何度も舌と唇を押し付け、舐めまわすと、力が抜けてふにゃ、となった涼太が、俺の胸に寄りかかるように倒れて来る。 床に座ったままソファに涼太ごと寄りかかり、細い首の後ろに腕をまわして片腕で支え、もう片方の手で涼太の顎をつかみ斜め後ろを向かせるように引き寄せる。 涼太の肩越しに顔を近付け、深くキスをした。 「はぁ・・・っ、もうキスっ、は、おわっ、たんじゃ、は、なか、た、のか、よ」 涼太は、顎を支えている俺の右腕にしがみついて、途切れ途切れの言葉を並べた。 俺は、涼太の言葉と、しがみついている手を無視して、顎から手を外し、涼太のTシャツの裾を捲り上げた。 うわ、やべえ。 涼太の白い上半身が露わになる。 ひときわ目を引くベビーピンクがまぶしいぜ! ドキドキしてきた・・・乳首見たくらいでテンション上がるなんて、思春期か、俺は! 触ってもいいんだよな?いや、いいのか? なんだか急に手が震えてきたぞ、ここに触って涼太が声を漏らしたりなんかしたら、もう俺は最後まで自分を抑えられる自信が無い。 どうする?触るか?いいのか? 俺の葛藤をよそに、涼太は乱れた息を整えながら、次の手を待っていた。 涼太のベビーピンクが、俺を誘うかのように甘そうな色を纏っているように見えた。

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