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第8話 最後の一手
涼太の露わになったベビーピンクに魅入っている俺は、その神々しさになかなか手を伸ばせないでいた。
「おい、寝てんのかテメェ、次どうすんだよ?」
涼太の冷めた声で、ハッと我に返る。
涼太くん、その学習意欲の高さはなんだ?意外と勉強熱心なとこあるんだな。学業には一切活かされてなかったけどな。
そんな涼太の意外な一面も、あのドス黒の為なんだと思うと腹が立つ。
俺は涼太をめちゃくちゃに泣かせると決めたんだ、そのミッションを忘れてどうする!
意を決して、俺を待ち構えているであろうベビーピンクの突起にそっと触れた。
「うっ・・・」
涼太の腰が一瞬跳ねる。
すかさず、涼太は声が漏れないように自分の両手で口を塞いだ。
捲りあげたTシャツがずり落ちて来て、愛しのベビーピンクを隠した。
ちっ、邪魔くせえな・・・
「咥えてろ」
俺は再度Tシャツを捲り上げ、口を覆った涼太の手元に持っていく。
両手を離して、現れた小さな口にTシャツの裾を押し込んだ。
自由になった涼太の両手を、俺の足の上に置くように促す。
両脇の隙間をくぐるように腕を差し入れ、背後から抱きつくように涼太の乳首に手を伸ばし、触れる。
Tシャツを咥えているため、今度は声が漏れる事はなかった。
・・・がしかし、この構図、いやらしすぎる。
咄嗟にやってしまった事とはいえ、自分で理性吹っ飛ぶ様な状況に持って行ってしまう自分が憎い。
でも、やるしかねえ。
指の腹で優しくなぞるように摩ると、涼太の乳首は小さいながらに立ち上がっていくのがわかる。
感じてる、って事だよな?
噛み締めたTシャツと唇の僅かな隙間から、荒くなる涼太の息が零れている。
軽く摘んで指先で転がすと、俺の太腿に乗せている涼太の手がスウェットパンツを、ぎゅっと握り締めて、体を捩らせた。
なんだよこいつ!なんでこんないちいち可愛いんだよ!
「かはっ、・・・っあ、いやだっ、やめっ」
堪えきれなくなった涼太の口からTシャツが外れ、俺の手を振り解こうとする。
「男が弄られて気持ちいい場所じゃないんだろ?まさか、弄られて気持ち良くなっちゃったとか?」
「・・・っちげぇよ!」
意地が悪いとわかっていても、涼太を困らせたくなってしまう。いつものポーカーフェイスをぐちゃぐちゃに壊してしまいたくなる。
全部おまえのせいだからな。
つまんでいる指先に力を入れると
「い、てぇ・・・!」
涼太の抵抗が弱まった。
そのチャンスを逃すまいと、涼太の腰に手を回し抱き上げて、乱暴にソファに投げつけた。ソファの角に追い込むように仰向けになった涼太の上に跨って、両手を掴み、抵抗出来ないよう縫い付けるようにソファに押し付ける。
「痛えんだよバカ!女相手にこんな事しねえだろ、ふつー!バカかてめえは!」
自分が逃げられない不利な状況になっているにも関わらず、威勢だけはいいな、こいつ。
女が相手なら、か・・・
「涼太にいい事教えてやるよ。男同士でもセックスはできる。それを今から体にたたき込んでやるから、覚悟、しとけ」
威勢のよかった涼太が、きょとんとした顔で俺を見た。
「男同士でセックスなんか、穴もねえのにできるわけねぇじゃん」
「穴ならあんだろ。ここ、とか、ここ、とか」
涼太の唇に軽くキスして、膝を下の穴に押し付けて教えると涼太の顔は青ざめていく。
「無理!オレ、青のやつよりでけえもん食ったことねえし、そんなでけえクソしたこともねえし!物理的に無理!だいたい、オレがやろうとしてんのは、乳首がドス黒いとはいえ、女だし・・・」
「涼太が、俺の事、バカバカ言ってうるせえから、おしおき♡」
青くなる涼太を尻目に、Tシャツの上から唇を這わせて乳首を探り当てて甘噛みすると、涼太がびくっと一瞬腰を浮かせる。
「むりむりむりむり・・・」
「痛い思いしたくないなら、ちょっと黙ってろよ」
Tシャツ越しに、舌で小さな突起を転がす。
素直におとなしくなった涼太の顔を盗み見ると、きつく目を閉じていて、声が出ないように噛み締められた下唇に少しだけ血が滲んでいた。
ソファに縫い付けていた手を解いてTシャツを脱がせるために上に引き上げると、捲りあげた布から、両脇があらわになった。
「毛、生えてねえ・・・」
「まじまじ見てんじゃねえ、オレのコンプレックス其ノニを。其ノ二は男のくせに体毛が薄いことだ。文句あっか!」
無いです。むしろ萌えちゃいます。なんて言えねぇけど。
無表情で悪態ついてるけど、顔が真っ赤だよ、クソかわ涼太くん。なんてのも言えねぇけど。
「声出そうなんだろ、無理に我慢すんな、血ぃ出てんぞ」
俺は、薄く血が滲んだ涼太の唇に、そっと親指をすべらせ、そのまま顎を持ち上げて舌で涼太の血を舐め取った。
涼太の血は、少し鉄っぽい味がしたが、なぜか甘く感じて、自分が吸血鬼にでもなったかのように錯覚してしまう。
首筋に唇を滑らせると、零れ出てきてしまう自分の声を押し殺そうと顔を赤くしながらも、俺に抵抗する事は諦めたようだった。
吸血鬼に血を捧げた者は、その吸血鬼の奴隷になる、という話を昔聞いたことがある。
俺達もそうなれたらいいのに、と心底思った。
涼太が奴隷になればいいとは思わないが、俺が求めるのと同じくらい、こいつにも俺を求めて欲しい。
涼太が無知な事を利用して、その体を奪おうとしている。俺はどこまでも浅ましく卑しい。
体だけ手に入れたとしても、涼太の心まではきっと手に入らないだろう。
親友の皮を被ったゲス野郎だ、俺は。
それでも、涼太を手に入れたい。
涼太の首筋に這わせていた舌をゆっくり胸元まで落とす。
薄い色を帯びたそれには触れずに白い肌の上に舌を滑らせ、思い切り吸い上げた。
「なん、で」
「心配すんな、本番までには消えてっから」
嘘だ。
来週の涼太の公休日は火曜日。つまり4日後。今現在が午前1時、今日が土曜日になっていると考えると、3日後という計算。
3日でこの跡が消えるわけがない。消えないように濃く残るように思いっきり吸ってやったのだから。
「ならいい、見えるとこに付けんなよ」
俺の嘘に安心したのか、涼太はホッとした顔でため息をついた。
なに安心してんだよ。面白くねえ。
涼太が安堵しているのをいいことに、涼太の胸元や脇腹、骨盤のあたりに至るまで、点々と濃い紅を残した。
時折、涼太の弱い部分にかすっているのか、微かな吐息が漏れていた。
涼太の白い肌に付けた紅色をみると、自分のものだと勘違いしてしまいそうになる。
満足した俺は、涼太が荒くなった息をする度に上下する、小さな突起を舌でつついた。
「っあ、」
涼太の短い喘ぎに、おさまっていた心臓が、ドクン、と跳ね上がる。
舌先で円を描くように転がし、ぴちゃ、といやらしい音を立てて唇で繰り返し啄む。
「う・・・ぅあ、や、あ、あ、」
いやだ、と言いたいのだろうが、必死で言うまいとしているように思える。いやだ、は、もっと、の意味だと俺が言ったのを覚えているのだろう。
「いやだ、って言えよ」
「ぅ・・・このドSめ・・・」
「今頃気付いたかよ、鈍感め」
涼太の股の間に膝を割り込ませると、涼太の固くなったものが太腿に当たった。
「バカ呼ばわりしてる男相手に、しっかり感じてんじゃん」
「ちが、う!」
「違わねえよ、俺で感じてんだろ?ここ、かたくなってんじゃん」
涼太が感じていることを知った俺は、もう歯止めが効かなくなっていた。
涼太に深く口付けながら、右手で厚みのあるスウェットの上から、固くなっているそれを下から上になぞる。
「ふぁ・・・や・・・めっ、さ、わ・・・んな」
「やめろ、は、もっと、って意味だろ」
スウェットの厚みが邪魔だ。
涼太のパンツの中に手を差し込み、直にその形を指でなぞる。
「ちょ、まって、ほんっとに、無理だって!」
涼太の制止を無視して、パンツを膝まで引き下げると
ほんとに毛、ほとんど生えてねえ。
「だから無理だって言ってんだろ!男がこんだけ毛、無かったら、きもいだろーが!」
いや、コレ逆にエロすぎるんですけど・・・
「やっぱ、オレに女抱くとかムリ、こんなん見て引かねぇわけねえじゃん・・・」
涼太は顔を隠すように両腕をクロスさせて、自信なさげな言葉を吐く。それを聞き流して、俺は涼太の股間に顔を埋めた。
「青!なにやってんだよ、汚ねえだろ!」
「汚ねえわけないだろ、あと、俺は気持ち悪いなんて、微塵も思わねえ」
握ると、俺の掌にちょうど収まるくらいの涼太のそれを、根元からゆっくり舐め上げて、口に含んだ。
「待って、マジで、あ、あ、それ、ほんとムリっ、だか・・・ら」
快感で、涼太の細い腰が震えているのがわかる。
先の方の赤く剥けている部分を丁寧に舐めると、先端から透明な汁が溢れた。
「も、ほんと、無理だって、オレ、ヘンになる・・・頼むから、もう、」
涼太が今にもこぼれ落ちそうな涙を溜めて、クロスさせた腕の下から、俺を見た。
涼太と目が合った瞬間、俺の頭の中に閃光が走ったような気がした。
夢中で涼太のそれを咥え込み、快感を与えた。
「やっ、だめ、だ、もうっ・・・ぁあ!」
びくんっと涼太の体が大きく跳ねて、ビクビクとした余韻を残し、全身に入っていた力が、一気に抜けるのがわかった。
俺は、喉の奥に吐き出されたものを、ごくん、と飲み込んだ。
まっじいな・・・喉の奥に何かが張り付いて、苦い。だけどそれが涼太のものだと思うと、愛しくて堪らなくなるから不思議だ。
「涼太?」
声をかけるが返事がない。まさか・・・
顔を近付けると、規則正しい寝息が聞こえた。
「嘘だろ、おい、俺のはち切れんばかりのパンツの中身はどーすんだよ!」
俺の切実な問いかけに返ってくるのは、寝息だけ。
「マジ勘弁してくれよ・・・」
涼太の寝顔を放心状態で見ていると、瞑られた目尻から零れた雫が白い肌を伝った。
泣かせた、事になんのか?
なんだか腑に落ちないが、とりあえずミッションクリア、か?
俺は乱れた涼太の服を正し、毛布をかけてやり、肩をガックリ落とす。
どうしても最後の一手が出せねぇ、どうしようもねえな、俺は・・・
とりあえず、トイレ行ってから・・・寝るか・・・。
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