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第17話 天然ノンケの所有権
翌日
涼太の様子を見に行くと、ぐっすり眠っていて起きる気配は無かったが、首元に手をあてると、熱は下がっているようだった。
時計を見ると、11時少し前。
部屋を出て、近くのカフェへ向かう。
「悪いな、宮野。急に呼び出して」
「全然大丈夫だよ。ちょうど山田と話したかったしさ」
「昨日は途中で抜けて、悪かったな」
「あー、気にしなくていーよ。それより涼ちゃん、具合だいじょぶだった?」
「ああ、今朝はもう熱下がってたよ。まだ寝てるけど」
「そーなんだー、よかった。昨日つらそうだったしさ、気になってたんだ」
「・・・気になってたのは、熱の事だけか?」
俺の質問に、宮野のコーヒーカップを持つ手が一瞬止まる。
「・・・そーだなぁ、あとは、涼ちゃんはどんな女の子とエッチしてんのかな、それとも男に抱かれてんのかな?どんな奴が涼ちゃんの細い首にかじりついてんのかな?とかね」
「やっぱりお前か」
「こっちのセリフなんだけどなぁ、それ。そんな怖い顔すんなよ、山田。あの様子じゃ、涼ちゃんはお前とおんなじ気持ちじゃなさそーじゃん」
「そんな事は大した問題じゃない」
「気持ちって大事だと思うけど?そんなんじゃ、他の男に取られちゃっても文句言えねーよ?」
「涼太が他の男のものになる未来は、来ねえ」
「・・・へえ、たいした自信じゃん。他の男に簡単にキスマーク付けられてんのに」
「あれは、涼太から目を離した俺の責任だ。だけど、もう誰にも触らせねえ」
「そうやって縛ってたら、いつか誰かに逃げたくなるんじゃねえかな?・・・例えば俺のところとかね」
バンッ
俺は、千円札をテーブルに叩きつけて席を立つ。
「これだけは言っとく。涼太は、女のケツ散々追っかけ回してきたお前が、手出していい男じゃねんだよ。遊びのつもりなら、今すぐ手ぇ引け」
宮野にそう釘を刺し、カフェを出た。
「あんだけ男、夢中にさせる体なんだ、涼ちゃん。やっぱ、欲しくなっちゃうな~」
カフェを出て薬局に寄ってから帰ると、涼太は出かけているようで、昨夜汚したシーツが、洗濯機の中で回っていた。
今日は仕事は休みのはず・・・
ったく、フラフラどこ行ってんだよ。
「ただいまー」
夕方になり、やっと涼太が帰ってきた。
「涼太、熱下がったばっかなのに、フラフラ出かけてんなよ」
「だいじょぶだよ、もう」
「熱が下がっても、昨日無理させて・・・」
「あーーーー!そんなことより!」
俺の言葉を大声で遮り、涼太が玄関のドアを開ける。
パンッ
「青、ハピバ~!」
クラッカーの音と共に、カズと優也が部屋になだれ込む。
「ちょ、おい」
「照れんな、青!お祝いという名のただの家庭訪問だから!」
「結構広いんだね、ちゃんとリビングもあるし、俺も真奈と同棲しよっかなぁ」
「死ね!優也!」
カズと優也が部屋を見て回る。
「あっれぇ、涼太くんのシーツが無くて、乾燥機の中ってことは、おねしょでもしたんでちゅか~?」
カズの一言で、俺と涼太が凍りつく。
「ちちちっげーよ!昨日までオレ、熱あって、汗いっぱいかいちゃったから、だからだから、洗ってるだけだよ、なあああ、青?」
涼太、動揺しすぎだから・・・
「なんかあやしいな、ま、おおかたエロ動画観てて、ひとり寂しくうっかり汚したんだろ。俺もよくあるからわかるぜ、相棒!」
ガシッと涼太の肩を抱えるカズ。ああ、こいつがアホでよかった・・・
「にしても、こんなもんまで使ってんのか、涼太くんは」
涼太の目の前で、カズが液体の入ったボトルをプラプラさせる。
それ、昨日のローションじゃねえかぁぁぁ!
やっっべえぇぇ、置きっぱなしにしてたぁぁ!
思わずカズの手からボトルをもぎ取る。
「え?それ、青のなの?なんで涼太の部屋に置いてあんだよ」
「え?いや、これは、彼女ができたら使おっかな~と思ってたんだけど、涼太がひとりでやるときに使ってみたいって言うから・・・」
ものっすごい怒りの目で涼太が俺を見る。
ごめん、涼太。
「おまえら寂しいヤツらだな。俺もだけどな!なんか泣けてくるぜ・・・」
はあああ~、カズがバカでホント良かった。
・・・ごめん、涼太。
「そんなキミに俺様達からありがたい誕生日プレゼントをやろう」
カズがずいっと出してきた紙袋の中には「オトナの缶」と書かれた大きな缶詰が入っている。
「なんだよ、これ」
「さみしい夜のお供だよ。若者。中身は開けてからのお楽しみだ」
いらねえ~!
と正直思ったが、とりあえず貰っておく。
「んじゃあ、俺たち帰るわ、この後バイトだし」
「俺は真奈と約束あるし」
「死ね!優也!じゃあまた来るわ」
あっという間に帰って行くカズと優也。
なんだったんだよ・・・無駄に疲れたじゃねえか。
ドアを閉めて振り返ると、無表情に無表情を重ねた、涼太が俺を睨んでいる。
「置きっぱなしにしちゃってた。ごめん、てへっ♡」
「てへ♡じゃねんだよ、このクソ変態やろーがぁぁぁ!」
この後ブチ切れた涼太に半殺しにされたのは・・・言うまでもない。
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