19 / 210
第19話 相談相手
一週間、涼太に避けられ続けている・・・。
正直・・・つらい。
今日の涼太のシフトは・・・早番か・・・17時までだな。
よし!迎えに行こう!
俺は、大学の帰りに、涼太の会社の最寄り駅で待つことにした。
17時過ぎ
仕事が終わった涼太は店から出る。
「涼ちゃん、今帰り?」
「のぞむじゃん、どしたの?偶然」
店を出てすぐに、出会った二人は歩きながら話す。
「はは、偶然?ほんとだね」
「あ、そーだ。合コンの時、ごめんな。なんか体調悪くて」
「気にしないで~。山田が涼ちゃんの事、担いで帰ったんだよ」
「青、が担いで・・・そっか」
「・・・なんか、あった?山田と」
「え?・・・別に、なんもない」
「涼ちゃん、隠し事下手だね。もしかして、山田になんかされてるんじゃない?」
「なんで知って・・・あ、なんもない。され、てない」
あーあ、顔、真っ赤にしちゃってカワイイな。
ほんと、かっさらっちゃいてぇな。
「涼ちゃん、ちょっとお茶してかない?俺、喉乾いちゃった。付き合ってよ」
のぞむが涼太の腕を引き、二人は駅近くのカフェへ入った。
二階の窓際の席に座り、のぞむが切り出す。
「涼ちゃん、山田とエッチしてんの?」
「ぶっ!なんっ、え?な、なんだよそれ?」
のぞむの唐突な質問に、飲んでいたソーダを吹き出す涼太。
「わかりやすいね、涼ちゃんて」
「え・・・っち、ってゆーのか、どーなのか・・・」
「いいよ。俺、そーゆーのに偏見とかないから」
むしろ、俺だって抱きたいと思ってるくらいだし・・・
「涼ちゃんは、山田のこと、好き?」
「え・・・好きだよ。中学からの付き合いだし」
「そうじゃなくて。山田と恋愛、できる?」
「青と恋愛なんてありえねえよ。だいたい男同士で恋愛とかなんないじゃん」
山田・・・かわいそうなやつだな~
「じゃあさ、なんで山田は涼ちゃんとエッチなことしたがってるのか、わかる?」
「それ・・・は、よくわかんねえ。嫌がらせ・・・なのかも」
山田~、ますますかわいそうなやつ!
「そっか、涼ちゃんはそれでいいの?」
「いいわけねえだろ。青のこと、親友だって思ってたのに、今更なんであんな嫌がらせしてくんのか、わかんねぇし・・・」
窓の外を何気なく見たのぞむは、駅前にいる青の姿が目に入る。
王子様の登場ってか・・・
「じゃあさ、俺が男同士の恋愛、教えてあげよっか」
「え?どーゆー意味・・・」
「キス、していい?」
のぞむは立ち上がり、テーブル越しの涼太に顔を寄せた。
涼太、おっせぇな。もう18時過ぎてんじゃん。
店からここまで15分もかからないはずなのに、一向に涼太は駅に来る気配がない。
何気なく見上げたカフェの二階に涼太と宮野がいるのが見えて、心臓が嫌な音でざわつき出す。
なんであいつら一緒にいるんだよ。
そう思った瞬間、宮野が立ち上がり、涼太に顔を近付けるのが見えて、俺は走り出していた。
カフェの階段を二段飛ばしで駆け上がり、二人が座る席に向かう。
「涼太!」
「え?青・・・?」
宮野の手が涼太の頬に触れているのを見て、全身の血が湧き上がる。
「涼太、帰るぞ」
涼太の腕を引き、席から立たせる。
「山田。涼ちゃんは帰るって言ってないんじゃない?」
「宮野、てめぇ・・・」
「青、最近おまえ、ほんとどうしちゃったんだよ」
「宮野に、なんかされてからじゃ遅ぇんだよ、わかんねえのかよ」
「・・・なんかしてんのは、おまえの方じゃねぇか」
「涼・・・」
「一人で帰る、ついてくんな」
涼太はそう言ってひとりカフェを出る。
「あーららら。そーとー怒らせちゃったんじゃねえの?王子様?」
「・・・」
「まあ、座れよ」
宮野に促され、とりあえず席についた。
やべえ。あんな涼太初めて見た・・・
「なんだよ。絡んでやろーと思ったのに、急に大人しくなんなよな」
「・・・」
「おい、山田!調子狂うだろ!」
「・・・」
「はあ。・・・おまえさぁ、ちゃんと涼ちゃんに好きだって言えよ」
「・・・言えるかよ」
「言わなきゃ、ほんとに涼ちゃん、離れってちゃうんじゃねえ?」
「・・・」
「まあ、俺にとっちゃ、お前から離れてくれた方が都合いいけどな」
「・・・」
「あー、もー!いいかげんにしろよ!うっとおしい!」
涼太、怒ってんだろうな・・・
失意の中、帰り道の記憶がないままなんとか帰ってきたが、ドアノブにかけた手がなかなか動かせない。
あんなに怒らせたのは初めてだな・・・
あんなに傷付いた顔の涼太を見るのも・・・
俺が、傷付けた・・・?
どんな顔して帰れば・・・
ガチャ
突然、玄関のドアが開き、涼太が顔を出した。
「いつまでそこにいるつもりだよ。気配がうぜぇ。早く入れよ」
ううう・・・涼太ぁぁぁ(泣)
ともだちにシェアしよう!