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第20話 天然ノンケの心と体 1

のぞむも青も、なんなんだよ。男同士で恋愛だとか男同士でセックスだとか!意味わかんねえ・・・ しかも、なんでオレなんだよ。せめて、なんかもっとこう、ナヨっとしたような、女の子っぽいやつ相手にしろよ!意味わっかんねえ! カフェを出たオレは電車に揺られながら、超絶イラついていた。 『なんか、かわいいな、と思って』 青の言葉を思い出し、窓に映る自分の顔をまじまじ見てみる。 この顔が?かわいい?ふざけんな、どっちかってゆーとカッコイイだろ! 『男誘ってねえって、言えんのかよ』 ・・・誘ってねえ。絶対に。 !! 突然、尻に生暖かい感触がして振り向くと、スーツ姿の40代くらいの男が、鼻の下を伸ばしてオレを見ている。 はあ・・・いいかげんにしろよ、またかよ。 なんなんだよ、青ものぞむも痴漢もよぉぉぉ! 電車が停まり、ドアが開いたと同時に痴漢のみぞおちに思いっきり肘を入れて、ホームに出る。 思えば、幼い頃から、知らない男に連れ去られそうになったり、通っていた空手道場の師範に体触られたり、痴漢にあったり、ストーキングされたり・・・ 男のオレがなんで?って思うような事は多かった気がする。恥ずかしくて誰にも言えねぇけど・・・ もしかして、青の言う通り、オレが誘ってんのか?・・・いやいやいや!絶対誘ってねえ! オレは、空手の県大会ジュニアの部で優勝するような、女子にモテてもおかしくない男だぞ? (師範にち〇こ触られて気持ち悪くてやめちゃったけど・・・) なのに、未だに童貞だし、青にはケツ掘られちゃうし、体中触られてあんあん言っちゃうし・・・なんなんだよ、マジで泣きてぇ! 部屋に帰って、ソファにドサッとうつ伏せに倒れ込む。 ふわっと微かに青のにおいがして ・・・オレ、ここで青とエッチなことしてたんだ・・・ なんて思ってしまう自分。 イヤイヤイヤイヤ、今のナシ。青の嫌がらせに付き合ってやるほど、オレはヒマじゃねぇ! 早く飯食って風呂入って寝て、明日の休みに備えなければ!・・・まあ、休みっつってもなんもすることねえけど。 よし、ハンバーグでも作って、テンション上げよ! ・・・なぜか、青の分まで作ってしまうオレ。 ん?玄関の前でなんか・・・人の気配。青かな。 ・・・ ・・・ ・・・ 気配はするのに、10分たっても入ってこねぇ。何してんだあいつ。 もしかして、オレが怒って帰ったから、入りづらいのか? 15分・・・20分・・・ あー!もー!うぜえ! オレはドアを開けて、しょぼんと項垂れる青に声をかける。 「いつまでそこにいるつもりだよ。気配がうぜぇ。早く入れよ」 「涼太・・・ごめん」 「もういいよ。落ち込み感がうぜえ!メシ食うぞ。今日はオレの大好物、ハンバーグだから。まあ、自分で作ったやつだけどな」 キッチンで、ハンバーグを運ぶ準備をしていると、後ろから青がぎゅ、と抱きついてくる。 「涼太、ほんと、ごめん」 外に長くいたせいか、背中に当たる青の体も、肩を掴む手も冷たい。 「もういいっつってんだろ。そんなにオレが怒ったのが怖かったのかよ」 「・・・こわかったよ。涼太が離れていくんじゃないかって考えたら、すげーこわかった」 巻きついた腕に力が入って、苦しくなる。 「おまえと何年つるんでると思ってんだよ。今更離れるとか、ねえよ。お互い彼女でもできれば離れるかもしんねーけど、今んとこ予定ないしな」 「・・・うん」 「オラ、くっついてないで運べよ、涼太さまが作ったハンバーグ、ありがたく食え」 夕飯を終えて、風呂に入り、のんびりテレビを観る。 あー、休みの前日は余裕があって遅くまで起きてていいなんてサイコーだな!エロ動画でも観るか!最近観てねえし! ソファから立ち上がって両手を上げて背筋を伸ばす。 「う!」 ビリッとした痛みが後ろの穴に走る。 そーいや、青からもらった薬塗ってねえな。痛えし、ちょっと塗ってみるか・・・ 寝室に入って、パンツを下ろし軟膏を手探りで穴のまわりに塗ってみる。 これって、穴の外に塗るのか?それとも中? バタン 青がバスルームから出てくる音がした。 「なあ、この薬って塗るの、外?中?」 寝室のドアの隙間から顔を出し、風呂上がりの青に聞いてみる。 「え?・・・あー・・・」 数秒考えた後に青が、ドアに手をかける。 「傷になってるとこがどこかわかんねえと。俺が見てやるよ」 「え?いや、いい!自分で見る!」 「自分で見えねえだろ、そんなとこ」 ドアを開けようとする青と、閉めようとするオレ。 「二回もケツの穴見てんだから、もう三回も四回も一緒だろ、見てやっから」 「う・・・」 それもそうか・・・ オレはドアを引く手を離し、青を寝室に入れた。

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