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第30話 天然ノンケの憂鬱 1
青に好きだと言われた翌日から、青からのラブラブ光線が止まらない。
毎朝、おはようのキスで始まり、いってらっしゃいのキス、おかえりのキス、おやすみのキス・・・キスキスキスキスキス・・・
正直、げっそり・・・
好きでいていいって言った以上、なんか、避けるのも変だし・・・
キス以上の事を求められてないだけ、まだマシか。
あー、ベッドから出るのがこわい。今日も朝から、ちゅっちゅっちゅっちゅっされんだろーなー・・・
あれがかわいい女の子だったら最高なんだけどな~。
はあ。そろそろ起きないと、仕事間に合わねえ・・・起きるか。
オレは重い体を起こして、寝室を出た。
「涼太おはよ。朝メシ、簡単だけどあるよ、食べるか?」
「うん」
テーブルにクロワッサンとサラダを並べる青。
「オレンジジュースしかないけど、いい?」
「うん」
「もうすぐハタチになんのに、コーヒーも飲めねえって、ほんと涼太はお子ちゃまだな」
「うるせえ!あんな、にげーの、飲みもんじゃねえ!」
・・・あれ?なんだ、今日、おはようのキスなし?
待て待て。なんだ、って なんだ!よかったじゃねーか!これがふつーなんだから!
・・・ほんとにしてこねーつもりか?
「涼太」
「な、なに?」
「急がねーと、遅刻すんぞ」
「あ、うん」
なんだよ・・・
「じゃあ、行ってくるわ」
「おー、気をつけろよー」
え?なんだ、いってらっしゃいのキスもなし?
なんだかモヤモヤした気持ちになりつつ、オレは玄関を出た。
イヤだから、なんだ、ってなんだよ!オレ!
これでいーんじゃん!さっきまでげっそり、とか思ってたじゃん!ちゅっちゅされなくてほんとよかった~・・・
オレはドアの外で、なんとなく、会社に向かう一歩がなかなか出せずにいた。
・・・なにやってんだ、オレ。仕事、行かなきゃ。
ガチャ
「涼太、まだ居たんだ」
ちょうど歩きだそうとした時に、青が出てくる。
「もしかして、俺のキス、待ってた?」
「っそんなわけ・・・っ」
そんなわけない、と言い終える前に、青の唇がちゅ、と触れてきた。
「好きだよ、涼太」
ボッと自分の顔が一気に赤くなるのがわかる。
「っ、仕事、行ってくる!」
恥ずかしくて青の顔が見れないまま、回れ右して歩き出す。
もー!なんなんだよ!誰も待ってねーし!しかも外であんな事すんなよな!す、好きとかあんな所で言うなぁ!
てか、落ち着けぇぇぇ、オレの心臓ぉぉぉ!
「・・・真っ赤になって、ほんとかわいいな、涼太は」
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