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第31話 天然ノンケの憂鬱 2

あーもー、青のやつ、マジなんなの? ぜってーオレの事からかって楽しんでるだけじゃん! やっぱりあいつの「好き」は信用出来ねえ。 仕事中に、悶々とするオレ。 ダメだ。何やってんだよ、入社二年目になって後輩もできたし、青の事ばっか考えてる場合じゃねぇ! 明日から三日間、出勤時間調整の特別休暇なんだから、今日中に売場作ってレイアウト変更して、午後からはミーティングだし・・・オレはやることがいっぱいあるんだよ! 「小林くん、なんか、今日気合入ってるわね」 「は!あさみさん」 「資材の事なんだけど、ちょっといい?」 資材室にあさみさんとふたりで入って、資材管理用のバインダーを手にする。 「なんですか?なんか足りないものとかありました?」 「そんなことより!これ、あげる」 は?仕事の話じゃねーのかよ。 「はい、どうぞ!」 そう言って、あさみさんがオレの手に無理やり封筒を渡してくる。 「なんですか?これ」 封筒の中身を出してみると、隣県の温泉旅館の招待券が2枚。 「それね、今付き合ってる人が監修してリニューアルした旅館なの。招待券もらったんだけど、指定が明日の宿泊でしょ?明日から三日間、特休よね?」 「いいんすか?頂いても」 「いーのよいーのよ!頂いちゃって!」 ・・・なんか、嫌な予感・・・ 「青くんと一緒に行ってきてね♡ぜっっっっったいに♡」 「・・・アリガトウゴザイマス」 「それでね、ひとつお願いが・・・」 「嫌です」 嫌だ。ほんとに悪い予感しかしない! 「・・・そう。あさみ、かわいい後輩の秘密、みんなにポロッと話しちゃうかも・・・」 「嘘です。お願い、ナンデスカ?」 くそババァ~! 「ちゃんと青くんと行った証拠に、浴衣で絡んだ写真が欲しいな♡」 浴衣で・・・絡む? 「楽しみにしてるね♡あ、資材、ギフトバッグのSサイズ、発注かけといてね」 「・・・ハイ」 「ちなみに、青くんにはさっきメッセージ送って、OKもらってるから安心して♡」 はあ?なんの安心だよ!てか、なに青もオッケーしてんだよ!帰ったらボッコボコにしてやっからな! 「青!」 「おかえり、涼太」 「てめーコラ、なにドス黒ババアと結託してんだよ!」 ビュンッ 「あっぶね!」 青に向かって放った回し蹴りをギリギリのところで避けられる。 「よけんじゃねぇ!」 「よけるだろ、ふつー!」 「よけたら殺す!」 ドスッ 「う!」 「・・・てめー離せコラ」 続けて脇腹めがけて打ち込んだ足を青にがっちり掴まれる。 「いってぇ・・・、涼太マジで凶暴すぎ。・・・でも、つかまえた」 青がニヤッと笑う。 やべえ、つかまったら力じゃ青に勝てない。 形勢逆転に、オレの嫌な予感は加速していく・・・

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