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第34話 楽しい温泉旅行 2
カシャ
カシャカシャ
「・・・あさみさん、ただメシ食ってるだけの写真撮ってどーするんですか」
俺がそう言っても、あさみさんのスマホのシャッター音が鳴り止まない。
涼太の表情筋は爆死してしまっている・・・。
「あ、ほら!これ見て!このアングルからだと、小林くんが青くんに、あーんしてるみたいに見える!萌えですぞ!」
「あ・・・ハイ・・・」
どーでもいいわ!と思いつつ、とりあえず生返事だけする。
「ふー、いい画が撮れたわ」
「お役に立ててよかったです」
「何言ってんの?本番はまだよ。しばらく二人にしてあげるから、ご飯ちゃんと食べて、雰囲気作っといてね!じゃあ、1時間後にまた来るわ!」
あさみさんが部屋を出ていく。
あの人、ハリケーンかよ。被害が大きすぎるわ!
あんだけゴキゲンだった涼太が一瞬で屍に・・・!
「涼太?無事か?」
「無事なわけねえだろ」
「だよな」
「すっかり『お願い』の事忘れて楽しんじゃってた自分に蹴り入れてぇわ・・・」
「とりあえず、メシ食ってちゃっちゃと終わらせようぜ」
俺は、涼太とくっつけるならなんだっていんだけど・・・。さすがに涼太は、上司に男とのイチャコラ見せなきゃなんねえし、ツライか。
1時間後
食事を終えた俺たちは、特に話もせずにあさみさんを待っていた。
「青、オレ絡みとか言われてもわかんねえし、頼んだぞ。あ、軽めのやつでな!」
「わかってるよ」
ちっ。軽めか・・・つまんね。
「失礼します~。準備はよろしいですか~?」
来た!
「もう準備はいいのかな?撮影会してもいい?」
「大丈夫です。あさみさん、拡散することだけはしないでくださいね!」
「青くん!そんな事するわけないでしょ!私がそんな女に見える?」
ハイ、見えます。
「・・・お願いしますね」
「大丈夫よ!私だけのカプよ、あなた達は!誰かに見せるのはもったいないもの」
???かぷ?
まあ何でもいいや。
「涼太、やるぞ、気をしっかり持て」
「・・・おう」
涼太と向き合って座り、抜け殻の様な涼太の肩に手をかけて正面からキスする。
・・・・・・・・・
アレ?シャッター音がしねえ・・・
「ちょっと、なんで止まってるの?動かなきゃ意味ないじゃない」
「え!動画なんですか・・・?」
「とーぜんでしょ!じゃなきゃ、私が来た意味ないもの」
「いーかげ、うぶっ!」
「ハイハイ。じゃあ、最初からやりますね」
慌てて、あさみさんに文句を言いそうになる涼太の口を手で塞ぐ。
「キスくらい、いつもやってんだろ。もう覚悟決めろ、涼太」
「あ、ちょまっ、っ!」
涼太の制止する手を掴んで、そのまま畳の上に押し倒す。
涼太が余計な事を言わないように、俺は深く口付けた。
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