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第38話 虎穴に入らずんば
温泉から帰って来て1ヶ月・・・
俺から涼太にキスしたり、好きだと言う事はあっても、涼太からは一度もない。
旅館でヤったときは、あんなに素直に求めてきたから、もしかしたら涼太も俺の事・・・なんて思ったのは、俺の勘違いだったのか・・・?
それに、最近なんだかソワソワしてて、怪しい。俺に隠れてコソコソスマホいじってるし。仕事の帰り時間も遅い時がちょいちょいある。
両思いでもないのにあんまり束縛すんのもどーかと思ってたけど・・・
帰って来たら、今日こそ問い詰めてやる。
その頃
仕事終わりの涼太は職場から近い駅にいた。
「涼ちゃん、帰り?」
「あ、のぞむ」
涼太の職場のすぐ近くの塾で臨時講師のバイトを始めたのぞむと、最近は帰りが一緒になることが多かった。
「涼ちゃん、考えてくれた?飲み会のこと」
「行きたいかな、とは思うんだけど、青に知られたらめんどくせーから、どーしよっかと・・・」
もうじき二十歳になる涼太は、酒が飲めるようになるため、既に誕生日を迎えているのぞむから飲み会に誘われていた。
「涼ちゃん、結局、山田にいいようにされてばっかで、童貞のままなんでしょ?後腐れなくヤれる女の子も来るんだよ?このまま一生男としての機能、果たせないままだったら嫌じゃん?」
「・・・やっぱ、そー思うよな、ふつー」
「山田が涼ちゃんの事、大好きなのはわかるけどさ。それとこれとは違うでしょ」
「・・・だよな」
「じゃあ、決まりね!涼ちゃん、ちょーイケメンだし、負けないくらいカワイイ子、ちゃんとセッティングするから俺に任せてよ。」
「あ、うん・・・てかのぞむのほーがイケメンじゃん」
「涼ちゃんからイケメンとか言われると、ちょーしのっちゃうよ、俺!」
「のっていーよ。ほんとに思ってっから」
涼太のこういう所が、とてもかわいいと、のぞむは思っていた。
自分は誰とも比べられないくらい、キレイな顔をしているのに、決して鼻にかけたりしない。
他人のいい所も素直に口にできる。
『 俺、ほんとに涼ちゃんに惚れてんだな・・・いつもだったら、気に入った子がいても、手に入れるために、こんなに時間と労力かけないよ』
のぞむは、涼太との時間を作るために、同じ駅を利用する場所でバイトを始めたのだ。
『 山田に邪魔されない時間作るために、俺がしてる努力に見合うだけの事、ちゃんとしてもらうからね、涼ちゃん』
のぞむにそんな下心があるなんて、涼太は疑いもしていなかった。
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