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第39話 男のプライド

「ただいま」 「おかえり」 22時か・・・今日はどこも寄ってなさそうだな。 「涼太、最近遅番ばっかじゃねえ?」 「あー、うん。遅番のバイトの子が今月急に辞めちゃってさ。社員で穴埋めしなきゃなんなくて」 「そーなんだ」 「明日休みだし、借りてたDVD観るだろ?オレ、先、フロ入ってくる」 「ああ」 遅番が終わってまっすぐ帰ればこの時間。だけど時々23時近くまで帰らない時がある。 ・・・なんか、俺、涼太の事好きすぎてストーカーっぽくなってねえか・・・?ダメだな。こんなんじゃ。 涼太が、宮野みてーなやつのとこなんかに逃げたら、シャレになんねえ。 「あー、スッキリした。青なんか飲む?」 風呂から出た涼太がキッチンで炭酸水をペットボトルから注ぐ。 「じゃあ、コーヒー。氷とミルクで」 「人にコーヒー飲めねーガキとか言ってるくせに、ミルク入れんのかよ。おまえもお子ちゃまだな、青」 「飲めないヤツに言われたくないんですけど」 「バッカおまえ、オレはもうすぐ酒も飲めるオトナになんだよ。さっそくのぞむと飲み・・・」 「のぞむ・・・?」 「・・・えっと・・・・・・・・・なんでもない」 なんでもないって?宮野と?最近の涼太が隠してることって、宮野がらみ? 腹の奥が焼けそうなくらい熱くなっていくのに、手足の先が段々冷たくなる。 「涼太、宮野とコソコソ何やってんの?」 「え?・・・いや、何も・・・」 「俺に言えないような事してんの?」 俺、今、宮野にすげえ嫉妬してる。すっげえだせぇ・・・。でも・・・ 「涼太の好きかもしんない人って、もしかして、・・・宮野?」 「は?なんでそうなるんだよ」 「否定、しねえんだ」 「おまえなー、みんながみんな、青と同じで男が好きじゃねんだよ。なんなんだよ、最近。好きだとかなんだとか、そんな事ばっかじゃねーか」 涼太がコーヒーの入ったグラスを俺の前に置いて、ため息をつく。 「でも宮野は・・・」 「青、いい加減にしろよ」 宮野はおまえのこと狙ってんだよ!・・・とか言ったら女々しいよな・・・ 俺は胸焼けしそうな思いを、ぐっと抑えて平静を装う。 「涼太が宮野と何してっか知らねえけど、俺は、涼太が男だから好きになったんじゃねえから。それだけは忘れんな」 本当は、俺の知らないところで涼太が他のヤツと・・・って考えると腸が煮えくり返る思いだ。 だけど・・・ 俺だけが涼太を追っていても、意味が無い。 涼太の意思で、俺を選んで欲しい。 俺は、この時のクソみたいなこのプライドを、のちに後悔することになる。

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