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第69話 おとなの缶 1

俺は、涼太に腹が立っていた。・・・はずなのに・・・ キスひとつで真っ赤になったり、舌入れて掻き回しただけでとろっとろになってる涼太を見てると、腹ただしい気持ちよりも、愛しい気持ちの方が勝ってくる。 「あお、今日、すんの・・・?」 「する」 「あの・・・オレ、昨日寝てなくて、眠いんだけど」 はあ~?俺も寝てないっつーの! 誰のせいだと思ってんだよ! 涼太は眠そうに、目をゴシゴシ擦る。 「はあ。しゃーねーな。早く風呂入って来いよ」 「うん」 カバンを引きずりながら自室に入っていく涼太。 なにあれ!かっわいい!なにあのクソかわいい生き物! なんだかんだ、涼太に甘くなっちゃうんだよな、俺。 涼太が風呂入ってる間に、ハンバーグでも買ってきといてやるか! 涼太の好きなハンバーグをテイクアウトして帰ると、ちょうど風呂からあがった涼太が、俺の持っている紙袋を凝視する。 「ハンバーグ・・・」 「食うだろ?」 「食う!」 キラッキラした目になる涼太。 ああ~、癒される! 「涼太、ハンバーグ食ったら、一緒に寝る?」 「・・・どっちの意味?」 「涼太の思ってる方の意味で」 俺のベッドで毛布にくるまって静かに寝息を立てる涼太。 ・・・ですよね~。期待した俺がバカだったわ。 涼太の頭を撫でながら、寝顔を見てると、つられてなんだか眠くなる。 ヴーヴーヴー なんだ?涼太のスマホ? うとうとしていた俺は、スマホのバイブの音で目を覚ました。 3時・・・。誰だよ、こんな時間に。 スマホの画面を見ると、ロック画面にメッセージが出ている。 『俺が今日好きって言った事、無しにしないでくださいね』 は?なんだこれ・・・送信者は『タケル』? 「おい、涼太。起きろ」 「んー、やだ。眠い」 「タケルって、好きってなに?」 涼太がぱちっと目を開ける。 「青、なんで知ってんの・・・?」 「スマホ、見てみろよ」 毛布にくるまったままの涼太にスマホを渡す。 メッセージを確認した涼太がスマホをポイッと投げてまた瞼を閉じる。 「オイ、説明ナシか?」 「だって、言われただけで、なんもされてねーし。説明しようがねーもん」 「じゃあ、なに?なんかされてから俺は報告受ける事になんのかよ?」 「・・・そーじゃねーけど・・・眠い・・・」 カッチーン こいつ、恋人が心配してるっつーのに、その態度とは、いい度胸じゃねーか。 涼太がくるまっている毛布を引き剥がす。 「うー。さみぃ。なにすんだよ。風邪ひくだろ」 「寒いなら、あつくしてやるよ」 横向きに体を丸める涼太に覆いかぶさって、耳に舌を這わせる。 「ぎゃっ、なにすんだよ!」 咄嗟に耳を隠す涼太の腕を掴んで、仰向けに寝かせ、深く口付けると、すぐに涼太の腕の力がぬける。 「誰かにこんな風にされてからじゃないと、おまえは俺に報告しねぇんだな?」 「タケルはそんなことしねえよ。ただ好きだって言われただけだっつったろ」 ただ好きって言われただけ~!?男が男に言ってんだぞ!なにそーゆーのに慣れちゃってんだよ! 「宮野ん時みたいに、なんかされる前に、俺のもんだってちゃんと体に叩き込んどかないとな」 「え!い、今から・・・?あの、今3時・・・」 「涼太、明日休みだろ?ゆーっくり寝てていいからな?」

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