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第72話 誘惑の夜 1

どうしよう・・・。 オレは今、会社のパソコンの前で目を疑うようなメールを開いてしまった・・・。 『新店オープン準備のため、以下の社員は二日間の応援協力をお願い致します。』 『小林涼太 加藤タケル』 新店って、同じエリアだけど他県だったよな? てことは、二日間ともフル通し・・・ってことは、ホテル泊で行かなきゃなんないじゃん。 よりによって、タケルと二人とは・・・ 青に言うのがこえーよ。 でも部屋別だろーし、別にやましい事なんてなんもねーし、仕事だしな! 「涼太さん、新店の応援、一緒ですね」 背後からタケルに声をかけられて、反射的に体が強ばる。 「そ、そーだな。今週末みたいだな」 「もしかして、警戒してますか?」 「え!?そんなわけないじゃん!」 意識してるとか思われたらやだな。 「はは。心配しなくても大丈夫ですよ。無理なことはしないって言ったじゃないですか」 そーだよ。青やのぞむみたいなのが、ゴロゴロいるわけない。今までのタケル見てて、そんなことする奴には、到底見えねーし。 「心配なんかしてないよ。オレ、車出すし乗ってくか?この前迷惑かけちゃったしな」 「別にあれくらい、気にしないでください。でも、俺、車ないんで乗っけてってもらっていいですか?」 「じゃあ、金曜日、6時に駅でいい?」 「はい。すみません。お願いします」 礼儀正しくて、いい後輩じゃねーか。今までと変わんないし。 「あのー、青さん。ちょっとお話いいですかね?」 ソファに座ってテレビを観ている青の横に正座して話しかける。 「なんだよ、改まって」 とりあえず言っとかなきゃ、またドエライ目に合わされてしまう・・・。 「今週末、金土なんですけど、オレ、他県に出張してきますんで」 「なんで敬語だよ」 てめーを怒らせねぇ為だよ! 「で、ですね、その出張なんですが、タケルと一緒に行ってきますんで、報告しとこーかと」 「は?タケルってメッセージの相手じゃん」 青が、視線だけこっちに向けて不機嫌そうに言う。 だよな。怒るよな・・・。でも仕事なんだからしょーがないじゃん~! 「ハイ。でも、なんもしないって言ってたし。青が心配するよーなことは・・・」 「わかったよ」 あれ?意外とあっさり・・・? 「もっと怒るかと思ってた」 「なんでだよ。仕事なんだろ。怒ってもどうしようもねぇだろ」 「はー、よかった。また怒ってめんどくせー事になるかと思ってたわ」 「オイ、俺をこじらせキャラにすんじゃねえ」 これで安心して出張行ける~!ほんとよかっ・・・ ドサッ 青が覆い被さってきて、オレはソファに仰向けに倒れ込んでしまう。 「それともなに?俺が怒って、めんどくせー事になんの、期待してたとか?」 「え?ちがう。ほんとに違うから」 青の顔がジリジリ近づいてくる。 「ちょっと、ストップ!オレ、出張終わるまで休み無いんだって・・・」 「そーか。じゃあ今日は1回で許してやるよ」 「あ?ど、どこ触ってんだよ!やめっ、・・・んっ」 ああ~、結局こうなんのか~~~

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