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第75話 フェロモンとは 1

20時上がりで高速飛ばしてきたけど、もう24時か。青起きてっかな? 車は明日、実家に持って行くしかねーな。近くの有料パーキングに停めて、何気なくスマホを見る。 青からメッセージ? 『浮気すんなよ』 げ。イヤ、あれは浮気とかじゃねーし。 コレ、受信してんの昨日の夜じゃん! 未読のままとか・・・。ぜってー疑われてるわ、コレ。 とりあえず、すぐそこだけど返信しとこ。 『今見た。あと3分で帰る』 後部座席から荷物を取って、パーキングを出る。 「おかえり、涼太」 「わ!・・・あ、青。びっくりすんだろ!」 パーキングを出たところで、青に声をかけられて、心臓が止まりそうになる。 「既読になったから、外で待ってた」 「こっわ!オレが返信する前に出てきてたのかよ。帰ってきてなかったらどーすんだよ。こんな寒いのに」 青がぎゅうっと抱きしめてくる。 「ちょちょちょ、ここ外!いくら夜中だからって、誰か通りかかったらどーすんだよ!」 「いっそ誰かに見られて、涼太は俺のもんだって世界中にバレたらいい」 「世界中の人達、キョーミねぇと思うぞ」 「うるせえ」 青の腕に力が入る。 「とりあえず、うち入ろーぜ?寒いし、痛いし」 「メッセージ無視したおわびに、ここで涼太からキスしてくれたら、入る」 「はぁ?」 ここで?え・・・こんな誰が通るかもわかんねーとこで? 「いや、青、それはちょっと・・・無理かなぁ・・・」 「じゃあ、帰ってもいいけど、酷くしてもいいんだな?」 酷いのは嫌だ! 「やればいいんだろ!」 うう、誰も通りませんように。 「ちょっと屈めよ!」 「ん」 オレの腰に手をまわした青が少し俯く。 上を向いて、キスしようとしたけど、あと少しが届かない。 くっそ~! 青の首に腕をまわして引き寄せ、短いキスをして離れる。 「ほんっと、ヘタクソ」 ガーン。 どーせオレはノーテク童貞ヤローですよ!もう絶対オレからキスしねえ! フイッとオレから顔を隠すように振り返り歩き出す青。 「なんなんだよ、急に置いてくなよな!」 青に追いついて、顔を見ると 「見んなよ」 ニヤけそうな、怒っているような、恥ずかしそうな、よく分からない表情をして、口元を手の甲で隠していた。 「青、もしかして照れてんの?」 「照れ!?んなわけねーだろ!涼太がちょっとかわいく抱きついてきてキスしたくらいで照れるわけねぇだろ!」 照れてんだな・・・。 「青かわいいとこあんじゃん。いつもドSのくせに」 「うるせえ。そんな余裕ぶってられんのも今だけだからな!」 この時オレはすっかり忘れていた。うちに帰ったら、昨夜の報告をしなければいけないということを。

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