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第95話 接近 2

のぞむにこーゆー事・・・って、そーいえばのぞむ、キスされそうになったとか言ってなかったっけ? 「タケルさ、こーゆー事、誰にでもやってんの?」 「どういう意味ですか?」 「え?イヤ、こーゆー事されて勘違いするヤツもいるんじゃないかなーと思っただけ」 のぞむに聞いたって言えねーしな。 「涼太さんが気にする事じゃないです」 ・・・それもそうか。 「それとも、勘違いして俺を好きになってくれるんですか?」 ええ!?それは・・・ 「それは、ない。タケルは、可愛い後輩だとしか思えない」 それに、オレはやっぱり青が好きだから。 「酷いですね、涼太さん。俺の気持ちに応えてくれる気もないくせに」 「ごめん。オレ、余計な事言ったな・・・」 タケルの両手で頬を包み込まれて、顔がまた近付く。 「なんとも思ってない奴には、このままキスします。でも、涼太さんは違う」 「ちょ、た、離し・・・」 「したいけど、できない。大事過ぎてできないんです。もし、涼太さんが許してくれたとしたら・・・」 タケルの顔が苦しそうで、何だかこっちまで胸が苦しくなってくる。 「涼太さんがボロボロになるくらいに、酷いことしてしまいそうで、これ以上できないんです」 タケルの言葉に、背筋がゾクッとする。 あ・・・今わかった。タケルを遠ざけられない理由。 こいつ、青に似てる。 見た目は違うけど、なんだろ・・・何となく。 「涼太さん?」 「え?」 「そんな顔してると、我慢できなくなっちゃいます」 タケルの手が離れる。 「もうのぞむさんもいないだろうし、帰りましょうか。すみません、引き止めてしまって」 「あ、うん」 大通りに出るが、のぞむの姿は無いようだった。 タケルが手を離さなかったら、オレ、あのまま流されてたかも・・・ ってダメだろ! いくら、タケルが青に似てるからって! そもそも男だし!男ばっかいらねーし! 「今日は、久しぶりに涼太さんとふたりでいれて、嬉しかったです。これから俺、のぞむさん見かけたら全力回避します!お疲れ様でした」 「おつかれ。気をつけて帰れよ」 のぞむ、かわいそーだな。・・・なんか、ごめん。 駅でタケルと別れて、家に向かう。 オレ、流されやすいのかな~。 こんなんじゃ、また青、怒らせちゃうな。 気をつけねーと。 「涼太」 「うわっ!」 アパートの近くまで来て、暗い中、急に声をかけられてドキッとする。 「あああ、青。くく暗闇からいきなり声掛けんなよな!びっくりすんだろ!」 「涼太が遅いから。ビックリしたくねぇなら、心配させんじゃねーよ」 心配、してくれてんだ。 なんか、じーんとすんな、こういうの。 「ごめん。ありがとな、青」 青の襟元をグッと引っ張って、キスする。 「ただいま」 「・・・涼太ぁぁぁ~!涼太からただいまのキスとか!やっべえ!」 「夜道でうっせぇ!近所迷惑だろ!」 未だにオレからのキスひとつで、こんだけテンション上がるとか、おめでたいな、コイツ。 オレは、タケルが手を出してこない事に、安心しすぎていたのかもしれない。 まさか、オレの油断が、青との日常を壊す事になるなんて・・・

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