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第96話 甘い罠 1

『最近、例の先輩とどうなってるの?』 ーーさやがタケルに送ったメッセージに返信がくる。 『まだ、なんにも。俺、本気だから姉貴はもう構わないで』 ふん。まだ何にもしてないの?ほんとビビりなんだから。 ーー自分が仕掛けた罠で、青と涼太の仲を割けなかった さやは、タケルが涼太に手を出してくれることを待っていた。 おもしろくないわね。あいつら、ほんとムカつく。 「山田~。今日ウチ行っていい?」 「絶対来んな」 宮野くんと青くん、また一緒? なんで青くん、男なんか好きなのよ。私の方が絶対いいのに・・・。 ーー青とのぞむの会話に聞き耳をたてる さや。 「だって、今日涼ちゃん飲み会でしょ?山田、ヒマじゃん、ねー、遊び行っていい?」 「ヒマじゃねーよ。来んなよ。来たらコロス」 「え~。つまんない!」 「なんでテメーを楽しませなきゃなんねーんだよ」 飲み会・・・?もしかして会社の? だったらタケルも一緒のはず。 『今日、仕事終わったら少し時間ある?』 『飲み会だから、その前に少しなら』 『ちょうどよかった。渡したい物あるから、会えない?』 『わかった』 ーーさやは、飲み会の場所を聞いて、タケルと会う約束を取り付ける。 「タケル、こっち」 ーー涼太たちがすでに飲んでいる居酒屋の近くで待ち合わせていた さやとタケル。 「何だよ、渡したい物って」 「これ、あげる。一回一錠ね」 ーーそう言って、薬の錠剤を渡す さや。 「何、コレ。ドラッグとかだったらいらねんだけど」 「違うわよ!これ、サプリメント。友達にもらって、疲れにすっごい効くから。あんた、仕事で疲れてるんでしょ?頑張ってるんだね。毎日遅いってお母さんから聞いてる」 「別に、俺は・・・先輩の方が疲れてると思うし」 「じゃあその先輩にもあげたら?じゃあ、私行くわね。そうだ、今日お母さん達いないわよ。久しぶりにおばあちゃんの顔見に、おばさんの家に行くって言ってたから」 ーーさやが去った後に、もらった錠剤を見るタケル。 「姉貴、なんか優しくなった?」 ーータケルは、さやから受け取ったサプリメントをジャケットのポケットに入れて、居酒屋に入る。 「加藤くん、何やってたのよ、遅いわよ!先輩達を待たせるんじゃないわよ!」 ーー既に酔っ払っているあさみが、タケルの腕を引っ張って自分の横に座らせる。 「涼太さんは?」 「小林くんはトイレ!なんか、今日あんまり調子良くないみたい」 「そうなんですか?」 「店長、小林くんに期待してるから、次から次に仕事振られて、お疲れ気味なのよ」 ーートイレから涼太が戻ってきて、あさみの横に座る。 「涼太さん、大丈夫ですか?顔色悪いですけど・・・」 ーーあさみを挟んで、タケルが涼太に話しかける。 「うーん・・・。だいじょぶじゃないかも。まだ1杯しか飲んでねーんだけど・・・」 「小林くん!今日は早く帰った方がいいわ!あさみが許してあげる!みんなにはちゃんと言っといてあげるから!だから、また協力してね!」 「なんで帰るのにあさみさんの許可がいるんですか。あと、できれば協力したくないです」 ーー涼太にぎゅっと抱きつくあさみを、軽くあしらう涼太。 「俺、送って行きましょうか?どうせ飲めないんで」 「そうね。こんな弱った小林くんが夜道で襲われでもしたら大変だわ。加藤くん、頼んだわよ!」 「すいません、あさみさん。これ、オレとタケルの分です。店長達によろしくです。お先に失礼します」 ーーあさみに二人分の会費を渡して、涼太はタケルと一緒に居酒屋を出た。

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