98 / 210
第99話 甘い罠 4
「さ、触ってほしい・・・」
何言ってんだよ、オレ。
こんなん、青になんて言えば・・・
青に申し訳ない気持ちと、早く楽になりたい気持ちがグチャグチャに入り交じって、泣きたくなる。
「も・・・やだ、あ、あっ!」
タケルの手にぎゅっと力が入って、もう限界だったオレは、服の上から握られただけでイッてしまった。
「はぁ、はぁ、たけ・・・る、ごめん」
「・・・いえ。俺が変なもの飲ませてしまったんで。ホントにすみません」
う・・・。パンツの中、グチョグチョで気持ち悪・・・。
「涼太さん、恋人に電話してもらえませんか?俺から説明させてください」
ええ!?
「お願いします」
タケルの思い詰めたような声に、断ることができなくて、青に電話をかける。
プルルルル プルルルル
『ハイ。どした?もう飲み会終わったのか?』
「あ・・・の」
青の声に胸が詰まる。
「代わってください、涼太さん」
オレがスマホを渡すと、タケルは部屋から出ていってしまう。
どうしよう。こんな事になって。青、絶対に怒る・・・。
オレ、ほんとバカだ・・・。タケルに悪気は無かったのかもしれないけど、もっと警戒するべきだったのに。
暫くして、タケルが部屋に戻ってきた。
「青さん、迎えに来るそうです」
「え・・・」
やばいやばいやばい!修羅場になってしまう!
オレ、殺されるかもしんない・・・。
10分ほどして、青からの電話が鳴る。
「涼太さん、もう歩けますか?服の中、気持ち悪いかもしれないですけど、俺の服着るよりマシだと思うんで、我慢してくださいね」
立ち上がると、さっきよりは、だいぶマシになっていたが、体の疼きはまだ残っている事に気付く。
コートを腰に巻き、玄関を出ると、タクシーを待たせた青がそこにいた。
「青、ごめん」
「帰るぞ、涼太」
青に手を引かれてタクシーに乗る。
「お二人にご迷惑かけて、すみませんでした」
タケルが深くお辞儀した。
「・・・もういい。連絡してくれてありがとな」
青がタケルに言って、タクシーが走り出す。
「涼太、体だいじょうぶか?」
疼きがおさまらなくて体を丸めるオレを、心配そうに青が覗き込む。
なんで怒んねーんだよ。オレ、自分からタケルに触ってほしいって言っちゃったのに。
青を裏切ったのに。
「青、ごめん。マジで・・・ごめん」
「話はアイツから聞いたから。涼太は悪くねぇだろ」
青に手をぎゅっと握られて、その手の感触に、また体が熱くなって、息が上がってくる。
「帰ったら、ちゃんと楽にしてやるから、もう少し我慢しろ」
その夜の青は、何だかいつもより優しくて、オレは青に甘えきっていた。
青が離れていくなんて、その時のオレは想像すらしていなかった。
ともだちにシェアしよう!