100 / 210
第101話 手に入れるためなら 2
え・・・、今、なんて・・・
「もう、一緒にはいられない」
別れ・・・る?
・・・一緒に、いられない?
なんで?
オレが、タケルとあんな事になったから?
青に理由を聞きたいのに、言葉が口から出てこない。
ソファから立ち上がり、ジャケットを羽織って、青は部屋を出ていく。
・・・なんで、何にも言えねぇんだ、オレ。
引き止める事だってできたかもしれないのに。
なんで動かないんだよ、オレの体・・・
ああ、そっか・・・
これが失恋ってやつか・・・
初めて知った。
苦しくて、何も言葉が出てこない。
何もできない。
青の最後の言葉を、頭の中で繰り返すだけ。
胸が痛くて、苦しくて、どうしていいかわからない。
ただ、青が今ここに居ないという現実が目の前にあるだけだった。
青に別れを告げられてから一週間。
昇進試験があったのと仕事が忙しいおかげで、青がもうそばにいないという現実から目を背けることができた。
「涼太、おめでとう!受かってるよ。ほぼ満点じゃねーか。スピード出世だよ、やっぱ俺が見込んで育てただけの事はあるな!ワハハ」
店長が、オレの昇進試験の結果をパソコンで確認して、ガシッと肩を組んでくる。
「ありがとうございます。これでようやく、あさみさんにランク追いつきました」
学校の勉強も、これくらいできてりゃ、もうちょいマシだったのかな、オレ。
「小林くん、おめでとう。私の指導が良かったのね、きっと!」
「二人とも、純粋にオレを褒めてくれる気はないんですか」
オレの頑張りを自分たちの手柄にすんなよな~!
「じゃあ、今日は店長の奢りでお祝いしましょ。私、お肉食べたい!焼肉連れてってください」
「しゃーねーな、ま、あさみのおかげでもあるからな!」
「加藤くんも誘ってあげなきゃ!小林くんが試験に集中できたのも、彼が仕事フォローしてくれたおかげだもの」
「よーし、じゃあ、タケルも誘っとけあさみ!」
タケル・・・あれから気まずいんだよな~。相変わらずのぞむを回避して一緒には帰ってるけど。
「あさみさんと店長、置いてきて大丈夫でしたかね?ふたりとも、結構飲んでましたけど」
店長達が盛り上がりすぎて、ついて行けなくなったオレ達は、二人を置いて店を出てきた。
「あー、いつもの事だからだいじょぶだよ」
あの二人に付き合ってたら、終電間に合わなくなっちゃうからな。
「・・・青さん、あれからどうしてますか?電話で話した時は、冷静そうでしたけど」
タケルに青の事を聞かれてドキッとする。
「あー、うん。・・・オレたち別れたみたい」
「え!?」
別れた・・・んだよな?あれから、青は帰ってきてねーし。
「俺のせいですね。本当にすみません」
タケルが頭を下げる。
「違うよ!オレが、いつもフラフラしてっから、青から信用されなくなっちゃって、それで・・・」
そう。オレが、悪い。
あんなに想ってくれてた青を、何度も傷付けてた。嫌われて当然の事をした。
何を思っても、後悔しても、きっともう遅い。
ともだちにシェアしよう!