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第102話 手に入れるためなら 3

涼太に別れを告げてから二週間。 大学にもほとんど行かず、実家からバイトへ通う毎日だった。 ピリリリリ ピリリリリ 着信は、加藤からだ。 「はい」 『青くん、なんで授業出てこないの?』 「ああ、ちょっと忙しくて」 『弟から聞いたわ。アイツと別れたって。なんで早く言ってくれないの?』 「悪い。気持ちの整理つけたかったから。会う時間、作ってくれるか?」 『じゃあ、明日の夜あいてる?』 「バイトの後でもいいなら」 『いいよ。バイト終わったら、私のウチに来て』 加藤の家か・・・抱いてほしいとか言うんだろ。どーせ。 俺も覚悟決めるか。やりたくないけど、やらなきゃならないことがある。涼太のためにも。 翌日 家庭教師のバイトを終えた俺は、加藤の部屋のインターホンを押す。 「待ってたよ。入って」 ドアが開いて、俺を部屋に招き入れる加藤の格好に思わずドキッとしてしまう。 大きめのTシャツ一枚で、下には何も履いていないかの様に見える。 普通の男なら誰でも、期待すんだろ、そんな格好で出迎えられたら。 「こっち座って」 1Kの部屋の奥にあるベッドに加藤が腰掛け、横に座る様に促される。 横に座ると、すぐに加藤の手が俺の太股にかかる。 「青くん、今度こそ、いいよね?」 加藤が上目遣いで擦り寄ってくる。 「待って、加藤。その前に聞きたい事がある」 「なに?」 「なんで弟まで巻き込んだ?」 「・・・そんな事?」 「加藤、お前の弟は関係ないだろ。あんな薬騙して渡して、危ないと思わなかったのか?」 「どうなったってよかったの。あのね、弟はゲイなの。ほんと虫唾が走る。でも、咄嗟に弟の部屋にスマホ仕込んどいてよかったわ。おかげで面白いもの撮れたし」 「ゲイだって理由だけで弟を利用したのか?」 「私、幼馴染みの人が好きだった。だけど、弟も同じ人が好きだったの。結局私は振られたわ。なんて言われたと思う?」 「さあ」 「弟の気持ちを知ってて、私と付き合うことはできないって。私はあいつのせいで振られたの!どっちも大切な幼馴染だからって。もちろん弟も振られたけどね」 「・・・」 「だから、青くんは絶対に手に入れるって決めたの。その為なら、誰がどうなろうとどうでもいいの。アイツらなんて特にね」 「・・・そっか」 「もういいでしょ?」 加藤が唇を寄せてくる。 「まだだ。動画、消せよ。それからだ」 加藤が動画を削除して、スマホの画面を俺に見せる。 「他に残って無いだろうな」 「あんな気持ち悪いもの、他に残すわけないでしょ。青くんさえ手に入れば、ただのゴミだもの」 これで、涼太の動画が晒される事はなくなったんだな。 あとは俺が、加藤を・・・。 俺は加藤をベッドに押し倒した。 「青くん、結構強引なんだね。そういうの、嫌いじゃないよ」 加藤が首に腕を回してきて、体が密着する。 「加藤、コレ、なんだと思う?」 俺は自分のスマホをポケットから出して、加藤の耳元に持っていく。 『なんで弟まで巻き込んだ?』 『・・・そんな事?』 『加藤、お前の弟は・・・』 加藤の腕が、するっと外される。 「・・・何よ、これ。さっきの・・・」 俺は加藤から体を離し、起き上がる。 「コレ、ネットで流したら面白いと思わねぇ?」 加藤の顔が青ざめる。 「お前、SNSじゃちょっとした有名人らしいじゃん。お前の本性バレたら困るんじゃねぇ?」 「・・・私を騙したの?」 「俺だってホントはここまでやりたくねぇよ。でも、俺も涼太を手に入れるためなら、誰がどうなろうと、関係ねぇから」

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