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第103話 手に入れるためなら 4

例え涼太を、自分を、その他大勢を傷付けても、俺は涼太を手放す気は無い。 「男欲しいなら、他当たれよ」 「待って!青くんっ!」 立ち上がって玄関に向かう俺を加藤が呼び止める。 「あの・・・もう、こんな事しない。だから、削除してくれるよね?」 加藤が震えた声で問いかけてくる。 「悪いな、加藤。俺にとって、涼太と、涼太が大切にしてるもの以外は全部ゴミだから。ゴミの言ってる事よくわかんねーわ」 「・・・最低」 加藤が涙を流す。 その光景を見ても、俺は何一つ心が動かなかった。 「やっと気付いてくれたみたいで良かったよ。じゃあな」 俺は、泣き崩れる加藤を見ない振りで部屋から出た。 青のいない真っ暗な部屋に帰ってくるのも、もう何日目なんだろう。 ただいま、と言っても迎えてくれる青がいない事が、淋しい。 体の一部分が抉られてるみたいだ。 昇進して、今まで以上にしっかりしなきゃなんないのに・・・。いつまでこんな状態引き摺ってんだ。 青に会いたい。顔が見たい。声が聞きたい。青の手で、指で、唇で、触ってほしい。 もう、叶わないのかもしれないけど・・・。 ジャケットをソファに掛け、青の部屋に入る。 少しでも青がいた気配を感じたくて、青のベッドに横になって頭まで毛布を被る。 オレ、こんなに青の事好きだったんだな・・・。 いなくなるまで、知らなかった。 電話、したいけど・・・ 毛布にくるまって、スマホを見るけれど、電話をかける勇気は、オレには無かった。 加藤の部屋を出た俺は、実家ではなくアパートへ向かっていた。 涼太に早く会いたい。あの顔に、唇に、肌に触れたい。 俺を待ってくれているかは、わからないけれど。 部屋の前まで来て、ドアを開ける手が躊躇する。 別れると言った俺を、今更涼太が受け入れてくれるのかが不安だ。 意を決してドアを開けると、部屋の中は真っ暗だった。 玄関に片付けられていない靴がある。もう寝た? 涼太の部屋を覗くが、姿がない。 「どこ行ってんだ、あいつ」 もしかして、俺の部屋・・・? 俺は自分の部屋のドアを開ける。 「なんでここにいるんだよ・・・」 ベッドの上に丸まっている毛布の塊がある。 頭から毛布を被っているため見えないが、それが涼太だと分かって、胸が締め付けられたみたいにぎゅっとなる。 頭にかかっている毛布をそっと捲ると、スマホを握ったままの涼太が静かな寝息を立てていた。 冷たい空気に触れたせいか、涼太が更に体を丸くする。 「ん、あ・・・お・・・」 寝言で名前を呼ばれて、心臓が鷲掴みにされたみたいになる。 やべぇ。久しぶりに見る涼太が、俺の夢見てるとか、マジでプレミア感・・・。かわいすぎ! 寝かせておいてやりたいけど、無理そうだ。 俺は、涼太の体を上から四つん這いで囲む。 「涼太、起きて」 「んー。青・・・」 耳元で声をかけると、涼太が薄ら目を開く 。 「あ、青・・・なんでいんの?」 覆いかぶさっている俺を、不思議な顔で見上げる涼太。 「涼太こそ、なんで俺のベッドにいるんだよ」

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