103 / 210
第104話 ここにいる 1
「俺がいないのに、なんで俺のベッドにいんの?」
青・・・だ。
なんでここにいるか、なんてオレの方が聞きたいのに。
「オレ、青に別れようって言われて・・・」
「うん。言った」
「青が出てって」
「そうだな」
「なのに、戻ってきて」
「ただいま、涼太」
「おかえり・・・って、なんで・・・」
目の前にいる青が、出て行く前の青とは違いすぎて、頭が混乱する。
「待って。オレたち別れたって事でいいんだよな?」
「良くねーよ。俺が涼太を手放すと思うか?」
思うか?って、だって、別れるって言ったのは青だろ・・・。
「一生、涼太だけだって、逃がさねぇって言ったろ?」
「は?・・・じゃあ、なんで別れるなんて・・・」
「あー、アレはお仕置きだよ。お前がガード緩すぎだから、ムカついて」
じゃあ、オレ、青と別れて・・・ない?
青の笑顔に安心して、オレは全身の力が一気に抜ける。
「涼太?俺が別れるって言ったの、泣くほど悲しかったのか?」
あれ・・・ほんとだ。なんで涙なんか出てんの、オレ。
「ごめんな、涼太。ここにいてくれてありがとう」
毛布の上から青にぎゅうっと抱きしめられて、涙が勝手に溢れてくる。
「青・・・あお・・・」
青に言いたいことがたくさんあるはずなのに、名前を呼ぶだけで精一杯になる。
悲しくて言葉が出なかったけど、嬉しくて何にも言えなくなる事も初めて知った。
例えば、青以外の誰かを好きになっていたとしたら、自分がこんな感情になるなんて、知ることが出来たのだろうか・・・。
「涼太、覚えといて。もしまたいつか離れる事があっても、俺は絶対に涼太を手放したりしない」
「・・・」
「俺は、涼太が側にいてくれるなら、どんな事だってする。だから、俺を捨てんなよ」
・・・なんだよ、それ。
捨てられそうになってたの、オレの方じゃん。
マジわけわかんねぇ。でも・・・
「オレ、バカだから、青の事傷付けてばっかで、ごめん。戻ってきてくれてありがと。大好きだよ」
向き合って青の背中に手を回してぎゅっと抱きしめ返す。
あ・・・青のにおい。体温、髪、少しだけ触れ合っている肌、オレにかかる体の重み・・・
青がまた、ここにいる。
このままずっと、こうしていたい。
「涼太、俺、もう限界なんだけど」
オレを抱きしめる青の腕が離れる。
え!?なんで・・・仲直りしたんじゃねぇの!?
「なあ、もうキスしていい?」
青が、指でオレの涙を拭って、唇に沿うように滑らせてくる。
その仕草がすごくいやらしく見えて、オレは体の奥が熱くなって、何だか恥ずかしくなってしまう。
「ダメって言ったらしねぇ・・・んっ」
オレが照れ隠しで言った言葉を、青が唇で塞ぐ。
「ダメって言わせねぇ。俺がこの二週間、どんなに涼太を抱きたかったか、わかんねえだろ」
青の目付きが鋭くなって、飢えた獣みたいになっている。
「オレ、だって・・・」
「何?聞こえねぇ」
う・・・。またわざと聞こえねーフリしてるな。
こうなったら・・・
「オレだって!青とエッチなことしてえっつってんの!」
ともだちにシェアしよう!