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第108話 ボーイズラブ 2

くっそ、なんなんだよ、兄貴。 真面目ぶりやがって! 『おまえのワガママで、涼太の将来、潰すようなことはすんなよ』 アパートに帰る途中、兄貴に言われた事が頭から離れず、俺はイライラしていた。 イラついているのは、兄貴にだけじゃない。 涼太を自分のものにしたい、それしか考えずに涼太にずっと無理強いしてきた自分にも・・・。 俺は、涼太とずっと一緒にいたい。涼太もそう言ってくれた。だけど・・・あれは俺が言わせたみたいなもんだ。 俺だって、全く考えなかった訳じゃない、けど・・・現実を叩きつけられると・・・。 涼太の将来か・・・。親か・・・。くっそ・・・ すっかり遅くなっちゃったな。涼太、帰ってるな。 「ただいま」 「おかえりー」 玄関のドアを開けると、リビングのソファに座ったままの涼太の声が返ってくる。 「どっか行ってたの?」 「・・・実家。雑煮食いに」 「そーなんだ。おばちゃんたち元気?」 「ああ。涼太によろしくって言ってた」 隣に座ると、じっ、と涼太がこっちを見つめてくる。 「青、なんかあった?」 普段ニブいくせに、なんで今日は鋭いんだよ。 「なんで?」 「だって、ただいまのちゅー、しねーじゃん」 いつもは俺が涼太の帰りを待ってるから、なんか流れが違って・・・ 「ごめん。していい?」 俺がそう言うと、涼太が膝の上に跨って俺の肩に両腕を掛ける。 「え?りょ、涼太。どーした?」 いつも自分からこんな事、しねーだろ!ドキドキしちゃうだろ~! 「・・・やっぱ、なんかおかしい。俺と、目合わせねーじゃん」 俺は、兄貴に言われたことが引っかかって、なんとなく涼太の顔を見れないでいた。 「オレに隠し事すんなって言っといて、自分は隠すのかよ」 言えねーだろ。 「痛っ」 突然、涼太に首筋に噛みつかれて驚きのあまり、涼太と目を合わせてしまう。 「やっと、こっち見た」 「あ・・・」 「なに?もしかして、おばちゃん達にオレと付き合ってるのバレた?」 当たらずとも遠からず・・・。なんでこんな時だけ鋭いんだって・・・。 「まあ、そんなとこかな」 「そっか。よかったじゃん」 は? 「なにが良かったんだよ。俺は、涼太の将来潰すかもしれねぇんだぞ」 「なんで青がオレの将来潰すんだよ?」 「俺が涼太を手放せば、涼太は普通に女と恋愛して、結婚して、父親になるかもしれない」 「あ?」 「俺が、涼太と一緒にいたいってだけで、それだけの理由で、おまえを一生縛りつけるかもしれねぇんだぞ」 「言いたいことはそれだけか?」 涼太が膝からおりて、俺に背を向ける。 「っ涼太・・・」 立ち上がった俺は、振り返った涼太にいきなり殴られて呆然とする。 「あ、わりー。寸止めするつもりだったけど、当たっちゃった」 涼太が無表情で、右手をブラブラさせる。 「ちょ、涼太、マジで痛いんだけど・・・」 「オレ、蹴りは得意だけど、突きは苦手なんだよな」 俺の訴えはスルーか。 「って事だよ、青。てめーは攻めんのが得意だろーが」 え・・・?どーゆー事? 「守りに入ったって、上手く行かねぇって事だよ」 「つまり、苦手なことはすんなって事・・・?」 「そーゆー事」 わかりづれぇ! つーか、こんなスパルタな励まし方、アリかよ・・・

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