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第110話 BL上等 1
「涼太。スーパー行こーぜ!」
ニッコニコでジャケットを羽織る青。
「買い物なら昨日、青がして来てんじゃん。オレ帰ってきたばっかで、また出るのめんどくせぇ」
「涼太が早番の時くらい一緒に行ったっていーだろ!」
たまの早番の日くらい、ゆっくりさせろよ~!
正月も休みなく働いて、疲れてんのに!
公休日までまだ四日もあんのに~!
「早く!」
「しゃーねぇな・・・」
オレは重い腰を上げて、ジャケットを羽織って青と一緒に玄関を出る。
「さっむ!せっかく暖かくなったのに~」
外に出ると、暖房で暖まった体が一気に冷える。
「じゃあ、ハイ」
青が手を差し出してくる。
「何?」
オレは握手する様にその手をとる。
「ちげーだろ!逆の手!いちいち言わなきゃわかんねーのか」
青に言われて手を逆にすると、オレの手を取ったまま青が自分のポケットにズボッと突っ込む。
え・・・。何コレ。
「オイ。なんかこれ恥ずかしいだろ」
「いいじゃん。涼太は暖かいし、手も繋げて一石二鳥だろ」
でも・・・。男同士でこんな事してる奴いねぇだろ・・・。
「堂々としてりゃいいんだよ。誰も俺達にキョーミねえよ」
「それはそうかもしれねぇけど・・・」
そのまま歩き出す青。
5分程歩いたところにあるスーパーに入ると、近くで買い物していた女性が、オレ達を横目で見てくる。
ヤバイヤバイ。これ、絶対変な目で見られてるわ。
「やだ、あれ、BLってやつ?初めて見た~」
何処かしらから聞こえてくる声。
「青、さすがにここでは・・・」
オレは青のポケットに入った手を引き抜こうとする。
「なんで?誰も見てねぇよ」
見てんだよ!バカか!なんでこんな時だけ鈍いんだよ!
「あー、あれか、ポケットの中じゃ嫌なんだな?」
青が、繋がれた手をポケットから出す。
「やっぱ、繋いでる~!やばっ」
聞こえる女性の声に、嫌な汗が背中を伝う。
「あ、青っ。見られてっから!もうは~な~せ~!」
ぎゅっと握られた青の手を、空いている手で剥がそうとするけど、更に力を入れられてビクともしない。
「見られてんのが恥ずかしいのか?そんなんで、親に堂々と俺が好きだって言えんのかよ」
「う・・・」
それとこれとはちげーだろ!
・・・でも、それもそうなのか?
オレは青が好きだって、男を好きだって事を恥ずかしい事だって、どっかで思ってる。
この前は、青に偉そうに言ったけど、どこか覚悟できていない自分がいる。
「っ堂々としてりゃいーんだろ!」
こうなったらヤケクソだ!
「ねえ」
突然、幼稚園児らしき女の子にジャケットの裾をつんつんと引っ張られる。
「おにいちゃんたち、びーえる?」
「ええ!?」
こ、こんな小さい子にも分かってしまうのか・・・!
「コラ!やめなさい!すみません。ほら行くよ!」
「かっこいいね、おにいちゃんたち」
去り際にそう言って、母親に手を引かれて行く女の子。
かっこいい、とは・・・。
青の顔をチラッと見ると、目が合って、青がふっと笑う。
「いいじゃん。周りに何言われたって。涼太が俺のもんだって世界中の人達に言って回りたいくらいなんだから」
きゅん・・・
う・・・、なんだ今のきゅんは!
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