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第118話 邪魔者 2
「涼太さん、おはようございます」
「おはよ、タケル。昨日は・・・なんか、ごめんな」
いつも通りに見えるタケルに、昨日、部屋から追い返してしまった事を謝る。
「こちらこそ、なんか、青さんの機嫌損ねてしまったみたいですみませんでした」
「ちげーし!タケル達のせいじゃねーから!青はいつもあーなんだよ。自分勝手だから・・・」
「それでも一緒にいる涼太さんは、相当青さんに惚れてるって事ですね」
「う・・・そ、そうかな」
のぞむの話したかったのに、なんで青とオレの話になるんだよ~!
なんだか今日のタケル、いつもより攻めてくるな・・・。余計な事突っ込まれる前に仕事仕事!
「涼太ぁ。今日から遅番で入るバイトの教育、任せていい?」
「はい。大丈夫です」
店長に言われて、新人バイトの履歴書に目を通す。
あ・・・同い歳じゃん。男・・・大学生か。
・・・この写真の顔、なんか見覚えが・・・
名前は・・・瀬戸 要、せと かなめ?
あ!!
こ、こいつは・・・学生の時、しょっちゅうオレにケンカふっかけてきてた他校のヤツじゃん!
ヤバイ。嫌な奴の教育係引き受けちゃった・・・
「あのー、店長・・・ちょっと」
やっぱオレじゃなくて、あさみさんに・・・
「タケルも大抵の仕事は覚えただろーし、涼太もランク上がった事だしな。新人の育成、よろしく頼んだぞ!」
「・・・ハイ。ガンバリマス」
夕方
「小林です。瀬戸さんの教育係なんで、これからしばらくよろしくお願いします」
「瀬戸です。よろしくお願いします」
瀬戸~!来やがったな・・・!どーせならすっぽかして永遠に来て欲しくなかったのに。
瀬戸の方も、オレを見て笑顔が引き攣っている様子。
高校時代は、ゴリラかと思う様な険しい顔してたけど、少しは大人しくなったみたいだな。
良く見れば、顔もまあまあで、身長も高いしガッチリしてるけど太ってはいない。
髪も昔みたいなヤンチャな感じはなく、少しチャラい大学生って感じだな。
「じゃあ、とりあえず、出勤中のスタッフに挨拶して来てください。その後、動画見ながら業務の説明しますので」
オレは、瀬戸との過去に触れずに、淡々と教育係としての仕事をするまでだ!
「わかりました。・・・って、オイ涼太てめぇ分かってんだろ?」
わー。うぜぇ。仲良くねぇのに名前呼びすんなよな。
「ハイ。わかってますけど。とりあえず仕事してください。新人さん」
相手にしてられっか。
「涼太、相変わらず俺の事相手にしてねぇって感じだな、オイ」
「時間無くなっちゃうんで、挨拶まわり、さっさと行ってもらっていいかな?瀬戸くん」
なんなんだよ~!ほんとめんどくせぇ!
「ちっ、まあいいわ。・・・そーいやてめぇ、山田って奴と仲良かったよな」
「それがなんだよ。早く仕事してもらっていいっすか、マジで・・・」
え・・・、なんで瀬戸、いきなり顔赤くなってんの。
もしかして、青の話したから?
「山田 青、になんかあんのか?」
青の名前を出すと、急にあたふたし始める瀬戸。
「イヤ、なんでもねぇ。じゃ、挨拶行ってくるわ!」
さっきまであんなにウザかったのに、瀬戸がスタッフルームからいそいそと出ていく。
え・・・?なに、今の。
マジで、青になんかあんのか?
瀬戸の奇行の意味を、この時オレはまだ理解できずにいた。
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