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第120話 邪魔者 4
結局、青と瀬戸の関係はわからないまま、今日も教育係として、夕方から瀬戸につきっきりで仕事を教える。
「汚ねえ。やり直し」
閉店した後の試着室の鏡を雑に拭く瀬戸に、フィードバックする。
「どこがだよ。キレイじゃねーか、てめぇ適当言ってんじゃねーぞ」
「汚ねえだろ、よく見ろ!かせ!」
瀬戸から鏡用のクロスをぶん取り、上から下まで左右にクロスで鏡を拭く。
「こーやんだよ」
瀬戸にクロスをポイッと投げて、次の試着室へ入る。
ったく、掃除もマトモに出来ねーのか。
・・・オレも家じゃ、やんねーけど。
「涼太、意外と器用だな。家でもやってんのか?」
「家でやるわけねーだろ。青がやってくれるし」
「青?・・・山田か?一緒に住んでんのか!?」
瀬戸がずいっと顔を寄せて聞いてくる。
きっも!
「ちけーよ!寄るな!」
「あ、わり。・・・で、山田と一緒に住んでんのか?」
「だったらなんだよ」
「そーか・・・」
あ、また青の話で大人しくなった。これは、確実に青狙いだな。
「瀬戸、青と知り合い?」
「知り合いっつーか、予備校が一緒だった」
それでか・・・。青に認知されてない事は言わないでおくか。
「山田って、カッコイイよな」
かかかっこいい!?瀬戸・・・おまえやっぱりか。
瀬戸を冷ややかな目で見るオレ。
「な、なんだよ。別に、深い意味はねぇよ。ビジュアルを褒めただけだろ!」
瀬戸がオレの視線にオロオロになって言い訳する。
「瀬戸、もしかしてだけど、好き・・・う」
「はあ!?てめぇぶっ殺されてーのか!んなわけねえだろ!」
顔を真っ赤にして、片手でオレの口を塞ぐ瀬戸。
明らか好きじゃん、コレ。
「痛え、触んなきもい」
腹を蹴り押し、瀬戸と距離を取る。
「涼太さん、店長が呼んでます」
「今行く。・・・瀬戸はちゃんと掃除しとけよ」
タケルに声を掛けられて、バックヤードに入る。
「店長室行けばいい?」
タケルに確認すると、オレの手をぎゅっとタケルが握る。
「すみません。嘘です」
「え?嘘?」
「涼太さん、ガード緩すぎませんか?瀬戸さんと距離近いです。あの人に油断しないでください」
えええ~!
タケル、勘違いだし!アイツが好きなの、青だから!
「大丈夫だよ。なんもないって」
「涼太さんがそんなんじゃ、俺、我慢するのやめますよ」
握られた手が、タケルの口元に持っていかれる。
「青さん以外に、これ以上邪魔が入るなら、もう容赦しません」
違う、違うのに~!
タケルの唇が手の甲に触れて、ビクッとしてしまう。
「ちょ、タケル・・・」
タケルが手を離して、オレは開放される。
「覚えといてください」
はあ。なんだかまためんどくせーことになりそうだな・・・。
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