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第121話 青の貞操 1

瀬戸がバイトに来はじめてから一ヶ月。 こいつも販売員としての仕事も覚えたし、そろそろ教育係は終わりかな。 一緒に休憩を取りながら、瀬戸の業務クリアシートにチェックを入れる。 はあ、やっとで開放されるな。 ヴーヴーヴー スマホを見ると、青からのメッセージ。 『迎えに行くから、帰り飯食って帰ろ?』 明日から特休で一週間休みだし、久しぶりに遅くなってもいいか・・・ 『はい』 青に返信する。 「彼女?」 スタッフルームのテーブルを挟んで向かいに座る瀬戸に聞かれる。 「あー。青から。帰り飯食おーって」 「山田!?・・・一緒に住んでんだもんな・・・」 心なしか、しょぼんとして見える瀬戸。 「涼太、山田の は、裸とか見たことあんの?」 え~・・・なにその質問。きも~・・・ 「あるけど」 でも律儀に答えてしまうオレ。 「ど、どんな感じ?」 どんな感じって・・・ 「んー、筋肉ついてるけど、そこまでガッチリってほどでもねーかな。まあ、ふつーって感じだな」 「・・・そうなのか」 「それを聞いてどうなるんだよ」 「え?あ?いや?別に、ただ聞いただけだ」 瀬戸が?青の体型をただ聞いただけ? んなわけあるか!いくらアホなオレでも、お前が青に気があるってわかるわ! 「お疲れ様でした。あさみさん、オレ明日から特休なんで鍵お願いします」 退勤後、スタッフが全員裏口から出たのを確認して施錠した後、あさみさんに会社の鍵を渡す。 「ゆっくり休んでね。青くんも大学春休みでしょ?おせっせの翌日の気怠げな小林くんをしばらく見れないと思うとさみしいけど・・・」 「あーさみさん!!早く帰りましょう!」 他のスタッフもいるのに何言ってんだこのババァは! 店の裏口から、大通りに出ると青が歩道のガードパイプに腰掛けて待っているのが見えた。 「涼太」 「ごめん、待った?」 「イヤ、俺もさっき来たとこだから。あさみさん、お疲れ様です」 一緒に大通りに出てきたあさみさんに青が挨拶する。 「青くん、お迎え?やぁだぁ、今からふたりで何するの?青姦とかだったらぜひ覗かせて!」 「そんなわけないでしょう!早く帰ってくださいって!」 「はは、今寒いんで、暖かくなったら考えときます」 青まで何言ってんだよ!ムリムリ! 「や、や、山田・・・」 俺の背後から、瀬戸の声。そーいやこいつもいたんだった。 「誰?・・・あ、おまえ、もしかして予備校一緒だったヤツ?」 青、ようやく思い出してやったか! 「この前言ってた瀬戸だよ。名前知らなかったのかよ」 「あー。そんな名前だったけ?」 なんかかわいそーだな、瀬戸。 「オレ達、今から飯行くけど、瀬戸も来る?」 「なんで知らねーヤツ誘うんだよ!せっかく久々の夜外食なのに!」 青が怒る。 オレだって、瀬戸と飯とか正直行きたくねーけど、確かめたい事もあるしな。 「いーじゃん、別に飯食うくらい。それに知らなくねーだろ。予備校一緒だったんだろ?」 「ったく。犬猫じゃねんだから、誰にでも懐くなっつってんだろ」 青が不機嫌そうにボソッと呟く。 別に懐いてるわけじゃねぇし。 「じゃ、行こーぜ、瀬戸」 「あ、ああ」 オレ達のやり取りを見て、固まっていた瀬戸がついてくる。 オイオイ。いつものオラオラはどーした瀬戸よ。 そうしてオレ達は、会社から歩いてすぐのファミレスへと入った。

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