123 / 210

第124話 青と瀬戸 1

あれは大学受験を控えて予備校に通っていた頃。 俺は勉強漬けで涼太と会う時間も減ってイライラしていた。 瀬戸に声をかけられたのはそんな時だった。 涼太不足でイライラしていた俺は、密かに隠し撮りしていた涼太の写真をスマホで見ていた。後ろの席に誰かがいるなんて思いもせずに、涼太コレクションに没頭していた時、後ろから声をかけてきたのが瀬戸だ。 「お前、真面目な顔してホモかよ。人は見かけによらねーんだな」 「うるせぇ。構うな、うぜぇ」 「俺、そいつ知ってるぜ?小林涼太だろ」 イッラ~・・・ 誰だか知らねえけど、なんで涼太を知ってんだよ! 「そいつ、目立つもんな。俺、そいつ見るとなんかムカつくんだよな。この前も、街で見かけて絡んでやったんだよ」 だからなんだよ。マジうっとおしいな。 俺の涼太に勝手に絡むな。 「俺の知らねーとこで、涼太に手出すのやめてくんない?涼太は俺のもんだから」 ・・・嘘だけど。 「え!なに?ガチホモなわけ?」 「まあな。だから、もう涼太に絡まないでくれる?」 嘘だけど。 「マジかよ~。あの涼太が?男好きなのかよ!意外すぎんだろ。あんな凶暴なクセに男好きとかウケるな」 イライラ~・・・ 高3にもなって、まだケンカとかしてんのかよ、涼太は。 「涼太が凶暴?いつも俺の体でヒイヒイ言わされて、かわいいもんだけどな」 ・・・の予定。いずれは。 「あの涼太が、男の体で・・・ヒイヒイ・・・マジか」 フン。引け引け。ドン引いて、涼太にも俺にも絡むんじゃねえ。 「ケンカじゃ負けるけど、そーゆーやり方で涼太を屈伏させるのもアリだな」 ブチッ 「てめぇ。次、涼太に関わったらその祖チンひん剥いて晒しモンにしてやっから覚悟しとけよ」 ・・・てな感じで、話をしたのはそれっきり。 まさか、涼太のところでバイトしてるとは思わなかった。 性懲りも無く、また涼太に近付きやがって・・・。 タケルは分をわきまえてるからいいとしても、瀬戸のヤツは油断できねー。 「ううう~。パンツがびみょーに冷てぇ。気持ちわりー」 夜道を歩きながら、涼太が渋い顔をする。 「ちょっと触られたくらいで、ガマン汁出しすぎなんだよ。スケベなのもいい加減にしろよな」 「てめーが言うな!ドSのド変態が!」 「そのド変態が好きなんだろ?」 肩を抱き寄せて、耳元で囁くようにそう言うと、涼太は顔を赤らめながらも俺を睨む。 「そーだよ。そのド変態が好きで悪いか!」 え!! 涼太がそんな風に答えるなんて思っていなかった俺は、目の前にある涼太の綺麗な顔に、思わず頬が熱くなってしまう。 「ふっ、青、ブサイクになった」 涼太の柔らかい笑みに、俺は顔だけじゃなく、、胸まで熱くなってくる。 「うるせー。帰ったら絶対泣かす」 ああ、マジで好きだな。 どうしようもないくらい、涼太が好きだ。 俺は、この恋が、この時間が永遠に続けばいいと思っていた。

ともだちにシェアしよう!