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第125話 青と瀬戸 2
涼太は今、特休という名の一週間の冬休み中。
俺も大学は春休みに入っているが、家庭教師のバイトがあるため、一緒に出かけることもほとんど無く家で過ごしていた。
「つまんねーな。もう三日も家でゴロゴロしてたら飽きちゃったな~」
ソファに寝転がってテレビを見ながら涼太が言う。
「カズと優也にでも遊んでもらうか?」
俺がそう言うと、深い溜息を吐く涼太。
「知ってっか?カズ、彼女できたんだよ」
「ま、まじで!?って事は、童貞じゃなくなったって事かよ・・・」
ああ~。涼太の童貞仲間が消えた・・・。
「青のバイトが無かったら、スノボ行きたかったのにな~。体動かしてぇな~」
涼太がつまらなさそうに、クッションを抱えてゴロゴロ転がる。
「スノボより体動かすことしてんだろ、毎日」
涼太に覆いかぶさった俺は、キスしようと顔を近付ける。
「セックスも飽きた」
な、なにぃ~~~!飽きた、だと~~~!
「どけ。重い。もうバイトの時間だろ」
「ほんっとかわいくねえ!」
無理矢理涼太にキスをしてから、俺はバイトに向かった。
この時期は、受験目前のためバイトの時間が長い。
すっかり帰りが遅くなってしまった俺は、アパートの部屋の前まで来て、中から賑やかな声がするのに気付く。
玄関のドアを開けると、男物の靴が3足。
誰だ?
「あ、青帰ってきた。おかえりー」
「ただいま」
「山田おかえり~」
「お邪魔してます」
リビングにいたのは、涼太と宮野とタケルと・・・瀬戸。
宮野とタケルはわかるにしても、なぜ瀬戸!
「お前ら、酒飲んでんの?」
テーブルの上に、アルコール飲料の缶とつまみが並んでいる。
「俺は飲んでないですよ。この3人だけです」
未成年のタケルはペットボトルのコーラを指さしながら言う。
「青もなんか飲む?おまえまだ未成年だから、ジュースな!」
涼太、もうだいぶ酔っ払ってんな。
目をトロンとさせた涼太が、冷蔵庫からペットボトルのジュースを数本持ってくる。
「瀬戸がこの前、飯代払ってなかったからっつって、タケルと一緒に来たんだよ」
「俺は途中でタケルくん達に出会って、じゃあ酒でも買っていこっかってなって、この状態」
「「なー」」
涼太と宮野が、肩を組んで声を揃える。
「離れろ」
俺は、宮野から涼太を引き剥がして、ソファに座る二人の間に割り込む。
「もー、山田ほんと嫉妬深い!ちょっとくらいいいじゃん。そんなんじゃ、涼ちゃんがかわいそう!」
「そーだ。のぞむもっと言ってやれ」
ダメだ、こいつら。完全に酔ってるわ。
しばらく五人で他愛もない話をして、最初に瀬戸が潰れ、いつのまにか涼太もソファにもたれて寝入ってしまった。
「あー、ふたりもうアウトだね。俺達もそろそろ帰ろっか?」
「そうですね、もう2時ですよ」
宮野とタケルがジャケットを羽織り始める。
「オイ、瀬戸を置いてくなよ」
置いていかれても困るんだよ!
「無理でしょ。だって瀬戸くん、でかいもん。運べないよ。電車も終わってるし。起きたら自分で帰るよ、きっと。じゃあね、山田」
「お邪魔しました」
瀬戸を放置して、宮野とタケルは部屋を出ていく。
ふざけんな。なんで寄りによって瀬戸を置いてくんだよ!
床に敷いてあるラグの上に寝転がる瀬戸を見て、溜息しか出ない俺。
「はあ」
部屋の明かりを落としソファに座ると、涼太が寝ぼけて、体を寄せてくる。
「寒い・・・。毛布・・・」
そんな涼太の様子を見て、俺は欲望のスイッチが入る。
「涼太、起きろ。暖かくしてやるから」
「んー。・・・あれ、のぞむたちは?」
「帰ったよ」
「そーなんだ・・・。じゃあ、おかえりのキスしねーと・・・」
涼太は酒が入っているせいか、いつになく大胆になって、俺の膝に乗りキスしてくる。
部屋が薄暗かったせいか、床に転がる瀬戸に気付いていない様子の涼太。
「青、しよ」
「飽きたんじゃねーのかよ」
「したい」
酒の力、恐るべし!涼太がエロい!最高かよ!
「じゃあベッド行くぞ」
「やだ。ここでする」
でもすぐそこで瀬戸が寝てんだけど・・・。
頬を擦り寄せて甘えてくる涼太。
瀬戸の方をチラッと見ると、眠りが深いのか、ピクリとも動かない。
・・・ま、いっか。起きねーだろ。
こんな風になってる涼太、滅多に見れないしな。
俺は涼太に気を取られて気づいていなかった。
瀬戸は動かなかったんじゃない。動けなかったんだと。
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