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第127話 不測の事態 1
青と暮らし始めて二年が経とうとしていた。
ふたりは上手くいってると思うし、オレはと言えば仕事も順調で、副店長を任されるほどになっていた。
何もかもが上手くいきすぎていて、オレは忘れていたのかもしれない。
青とのこの関係が、ひどく不確かで、繋ぎ止めるものが何もないということを。
「涼太、ちょっといい?」
「はい」
パソコンの前に座り、スタッフのシフト表を作っていたオレは、店長に呼ばれて店長室へ入る。
「涼太さ、モデルやってみる気ない?」
「え!?モデル、ですか?」
いきなり過ぎる店長の言葉に、目が点になる。
「そー。うち、SNSでスタッフのコーディネート上げてるじゃん。涼太が出てると閲覧数も上がるし、これは誰だって問い合わせが多いらしいんだよ」
「はあ」
なんだかピンとこねーな。
「そしたら、上の連中が青田買いで涼太をうちのブランドの広告塔にしよっかって話になったらしくて、涼太さえ良かったら、モデルとして専属契約させて欲しいんだってさ」
「はあ。なんでオレですか?他にいるでしょーに」
突然の話すぎて、頭が混乱してきた。
「おまえ、その顔でそれを言うか?俺は悪い話じゃないと思うけどな。まあ、考えてみてよ」
家に帰ったオレは、昼間店長に言われた事を思い出していた。
オレがモデル?・・・いや無理だろ。今の仕事が好きだし、だいたいオレはふつーの会社員だぞ?人前であんま笑えねーし、SNSの写真だっていつもテキトーにスマホで撮ってもらってるやつだし。
「涼太、なんかあった?」
考え込んでいるオレに気付いて、青がオレの顔を覗き込んでくる。
「あー、うん。なんか、店長が、うちの会社のモデルやらねーかって・・・」
「は?モデル?ダメに決まってんだろ」
だよな。
「オレもそう思う」
「涼太がモデルなんかやったら、また余計な奴らが近付いてくるだろーが」
そういう理由かよ。
「そんな事より、うちの店舗いくつあると思ってんだよ。全店にオレの写真が並ぶって考えたら、気持ち悪いだろ。ムリだわ」
ダメだ。想像しただけで寒気がする。やっぱり断ろう。
「全国に俺のカワイイ涼太が・・・そんなん耐えれねぇ。涼太は俺だけのもんだろ?」
青の手が頬にかかり、瞼にキスが落ちてくる。
目を開けて青を見上げると、怒ったような困ったような青の顔があった。
「おまえを、誰にも見せたくない。このままここに一生閉じ込めて、俺がいなきゃ生きてけないようにしたいくらいなんだからな、俺は」
青に骨が砕けるかと思うくらい強く抱きしめられる。
「青・・・痛いし、こえーし」
「本当にするわけねーだろ。それくらい、涼太が好きだって事だよ。わかれよな」
わかってる。つもりではいる。
時々激しくなる感情も行動も、かと思えば優しく触れてくる手も言葉も、どんな時でも青から、好き、を貰っている気がする。
「涼太、していい?」
え!?もー、すぐそーなるんだよな・・・
「オレ、休みまでまだ遠いんだけど・・・」
「入れねぇから。ダメ?」
・・・まあ、挿入無しならいっか。
「ちょっとだけだからな!」
「大好きだよ、涼太」
・・・といいつつ、昨日も最後までヤッてしまうオレ。
ああ~。下半身がダルい。
「店長、昨日の話、お断りさせて頂きたいです」
「やっぱ、涼太ならそう言うと思ってた」
思ってたら最初から言うなよな~。無駄に体力使っちゃったじゃん!
「そう思って、もうひとつ用意してる事がある」
「なんですか?」
小出しにすんなよな、オッサン。
「上海、行く気ないか?」
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