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第128話 不測の事態 2

「上海、行く気ないか?」 「上海・・・?」 上海って・・・あの・・・ モデルの話より度肝抜かれたんですけど・・・ 「上海の店舗が売上いいのはお前も知ってるだろ?日本人の観光客や、滞在してる人も多い。日本人のスタッフが欲しいそうだ」 「でもオレ、英語も中国語もできないですけど・・・」 「向こうに日本語ができるスタッフがひとりいる。それにもしお前が行っても日本人客の対応だろうから心配ない」 「店長、話が急すぎてオレついていけないですよ」 本当に、このオッサンは・・・ 「出張、て事ですか?」 「いーや、移動だな。でもな、帰ってきたら本社勤務が約束されてるぞ。涼太、企画部に入りたいって言ってたじゃねーか」 それはそうだけど・・・ 「期間はどれくらいですか?」 「今のところは二年。お前はまだ若いし、帰ってきてもまだ24だろ?高卒でそんなスピードで出世できるやつなんて、うちの会社にいねーぞ」 二年・・・青と離れるって事だ。 「モデルの話と違って、本社勤務希望のお前に断る理由、ないだろ?結婚してるわけでもないしな」 断る理由があるとすれば、それは、青だ。 でも、青を理由にして断ったとして、オレは後悔しないって言えるだろうか。 「返事は一週間以内にはしてくれ。二ヶ月後には上海にスタッフを送りたいからな」 「はい」 急な話で驚いたけど、オレは、上海へ行きたいと思った。 ただ、青になんて言おう。 オレが上海へ行くと言ったら、一緒に行くって言いかねないな・・・。 「青、たとえば、たとえば!なんだけど・・・」 ソファに並んで座ってテレビを観ている青に話しかける。 「オレが、遠くに行かなきゃなんなくなったら、どうする?」 「なんだそれ?遠くってどんくらい?」 「・・・海外とか」 「は?冗談でも言うなよ。死ぬ気で引き止める」 ついてくる方じゃねーのかよ! 「それでも行くって言ったら?」 「引き止める。俺はどうしてもやらなきゃなんねー事がある。大学はそのために入ったんだ。辞めるわけいかねーし」 そうだったんだ。何となく行ってるだけだと思ってた。 「青のやりたいことって何だよ?」 「ヒミツ。それが叶った時に教えてやる」 なんだよ。・・・まあ、いずれわかるならいいか。 「青、オレもやりたいことあんだ。今の会社で、企画の仕事したい。そのためには本社に行かなきゃなんねー」 「本社って、近いじゃん。なんで海外が出てくんだよ」 それは・・・ 「そのために、上海に二年行くつもり。帰ってきたら本社勤務できるんだ」 「は!?上海!?二年?ふざけんなよ。俺から離れんのか?」 「そう、なるな」 「行くな、って言ったら?」 青の顔が見れない。怒っているのは声でわかる。 「それでも、行きたい」 もし、オレが男じゃなかったら、仕事よりも、青と一緒に居ることを選んだのかな。 もし、結婚できるような関係だったとしたら・・・。 「涼太は、俺と離れて平気なのか?」 ・・・正直、わからない。青がいない生活が想像すら出来ないくらい近くに居すぎて。だけど離れても・・・ 「離れても、好きなら平気だろ」 そう言うと、青はオレの腕をグッと掴む。 「俺の目が届かねぇ所に行くな。今までを思い出してみろよ。おまえは危なっかしすぎんだよ。俺が面倒みてやんなきゃどーすんだよ」 ぐ・・・。確かにオレは青を怒らせるばっかだったけど。 「オレは、男なんだよ。青に面倒みてもらおうなんて、思った事なんかない」

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