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第129話 不測の事態 3
「オレが、青に面倒みてほしいなんて言ったことあるか?」
珍しく涼太が本気で怒っているのがわかった。
涼太のピクリとも動かない表情の中にある冷めたような目、低くなる声に、俺は少しだけ動揺する。
それでもここで、引く訳にはいかない。
わがままだと分かっていても、涼太を上海に行かせる事なんてできない。
「離れるなんて、許さねぇ」
「なんでだよ。別れるんじゃない。ただ距離が遠くなるだけだろ」
離れても、俺の気持ちはきっと変わらない。だけど、涼太の気持ちは・・・?
離れてまで、涼太を繋ぎ止めておける自信なんて、今の俺にはない。俺はまだ学生で、自分ひとりじゃ何の力も持っていない。
それに涼太は、誰にでもいい顔して、流されやすくて、快感に弱くて・・・そんな奴が俺と離れても大丈夫なんて、なんで言えるんだよ。
俺と涼太の間を、ひどく冷めた空気が漂う。
その空気をなんとか壊したくて、涼太の頬に手を伸ばし、唇を近付けた。
「やめろ。そんな気分じゃねぇ」
涼太が視線を下げて、俺を避けるように横を向く。
その仕草に体中の血が逆流したように腹が立った俺は、涼太の腕を力いっぱい掴んで自分のベッドまで連れて行き、乱暴に突き放した。
「そういう気分じゃねぇっつってんだろ!いつもいつもソレしかねぇのか、てめーは!」
「ああ、そうだよ。他に涼太を繋ぎ止めておけるものなんか無いだろ」
激しく抵抗する涼太の両手首を、ベッド脇にあったスマホの充電用のケーブルで拘束し、うつ伏せにして馬乗りになり押さえ付け、俺は涼太の項に噛み付いた。
「っ・・・い・・・って」
涼太の項にうっすら血が滲んで、痛みに耐えるために肩で大きく息をしている。
滲んだ血を舐めとるように項に舌を這わせると、上下していた肩が小刻みに震え、痛みから快感へ変わったのだと、涼太の体が教えてくれる。
涼太の体を仰向けにして、拘束した手首を頭上でベッドに押さえ込み首筋を舌と唇で責めると、荒くなる息に微かに漏れる声が混じり、涼太の肌が熱くなってくる。
「いやだ・・・。したく、ない」
それでも抵抗しようとする涼太の下着の中に手を差し込み、反応を確かめる。
「したくない?こんなんなってんのに?無理矢理こんな事されてんのに感じるなんて、ほんとだらしねえな、おまえのからだ」
涼太は何も言わず俺を睨んだ。
ズボンと下着を剥いで、ジェルを塗った指を後ろの穴に差し込み、中をゆっくり擦る。
「・・・っ、ふ・・・、う」
声を押し殺す涼太を見て、俺は益々頭に血が上る。
後ろを指で拡げながら、前を舌で責めると、堪えきれなくなった涼太が体をよじらせる。
「あ、青っ、ま・・・それ、やだっ、あ、あ」
すぐにイキそうになっているのがわかって、俺は涼太のモノを根元でぎゅっと握る。
「う・・・うぁ、やだ、イキた・・・、離・・・し・・・んんっ!」
涼太の腰が跳ねて、中が痙攣する。でも射精していない。
「あ・・・んぁ・・・はぁ、はぁ、な・・・に?」
「涼太、イッたのに、イケなかったんだ?ドライだよ、分かるか?メスイキって事」
自分でも何が起こっているかわかっていない涼太に教えると、きょとんとしながらも声を震わせている。
「ドラ・・・?めす・・・?」
「そう。射精無しで女みたいにイク事だよ」
それを聞いて、涼太が真っ赤にした顔を拘束された両腕で隠す。
「涼太、メスイキなんかしてるヤツが、自分は男だって偉そーに言えんの?」
「うるせぇ。オレは青に何言われても、上海に行く」
折れない涼太に、俺は心底苛立っていた。
その日は、涼太が気を失っても叩き起し、泣いて懇願されても、解放せず朝まで抱き潰した。
それでも涼太が折れることは無く、寝ていないボロボロの状態でもなんとかシャワーを浴び仕事に行く姿を見て、俺は涼太がどれだけ真剣に仕事に向き合っているかを知った。
・・・だったら、俺が涼太と離れないためにできることは・・・
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