130 / 210

第131話 交錯 2

「涼太さん!大丈夫ですか!?」 仕事中に目眩がしてふらつくオレをタケルが支えてくれる。 「ごめん。大丈夫。ちょっと疲れてて」 ここんとこずっと青が盛ってるせいで、まともに寝れてもないからな・・・。 オレが上海に行くことを正式に決めてからなんて、特に酷い。 上海に行く前に死んじゃうかもしんない・・・ 「小林くん、気怠いの通り越して病的になっちゃってるわね。うん。それも悪くないわ!」 「あさみさん、何にでも萌えるのやめてもらっていいですか?」 実際、体はボロボロで体調も良くない。 だけど、離れることに不安を持っている青を、少しでも安心させたい。それだけ。 「はあ、なんでこんな体力ねーんだ、オレ」 「涼太さん、俺・・・」 「タケル、ちょっといいか?」 何か言いかけたタケルが店長に呼ばれる。 「・・・はい。今行きます」 しばらくして、なんだか嬉しそうなタケルが戻ってくる。 「なんかいい事でもあった?」 「はい!俺、涼太さんと一緒に上海行けることになりました!」 「・・・え?タケルも?あ、でも社員が二人も欠けたら店どーすんだよ」 「店長にお願いしてたんです。そしたら、他店から社員まわしてもらえるって、さっき部長から連絡あったって」 単身で行くのに多少不安はあったから、タケルと一緒なら心強いけど・・・ 青がどう思うかを考えると、ますますぞっとするな。 「俺はどこまででも涼太さんについて行きますよ!」 タケルが無邪気に笑う。 どこまででもって・・・。ほんと、タケルのこういうところ、青に似てるんだよな。 上海に行く日が二週間後に迫っていた。 が、オレは日本を発つ日を青に言えないままでいた。もちろんタケルと一緒だということも未だ言えていない。 もうそろそろ言わねーと・・・。 「青、オレ、二週間後に行くから」 「は!?嘘だろ?あと二週間しかねーの!?」 怒られるのは覚悟している。 「なんでもっと早く言わねーんだよ!信じらんねえ!」 頭を抱えた青がベッドの上にいるオレの隣に座る。 「二週間しかねえんだ。これから会えなくなる分、抱き潰される覚悟、できてんだろーな?」 う・・・。その覚悟はできてない。でも、仕方ない・・・ 「その前に、もういっこ言わなきゃなんねー事が」 オレに覆いかぶさってくる青の体を押し返し、向き合って座る。 「タケルも一緒に上海に行く」 「・・・・・・・・・」 さすがにこれはマズかったかな。 ふたりの間に長い沈黙が流れて、青がようやく口を開く。 「ふざけてんの?涼太。俺の気持ちわかってて、タケルと一緒に行くって言ってんのか?」 青の目が据わってる・・・。本気でキレてるな、これ。 「仕事なんだからしょうがねぇだろ。好きで一緒に行くわけじゃない」 「・・・・・・」 「それに、オレが好きなのは青だけだってわかってんだろ!」 言わせんなよ、恥ずかしい! 「わかんねえよ」 は!?恥ずかしいの我慢して言ったのにそれ? 「わかるわけねえだろ。俺が涼太を想ってる100分の1も、おまえは俺の事想ってない」 「あ?んなわけねぇだろ」 そんなわけない。青を好きじゃなきゃ、こんなボロクソになってまでセックスなんかしない。 「・・・やっぱり俺も上海に行く」 「なんでそうなるんだよ!大学行けっておばちゃんに言われたんだろ、ちゃんと行けよ!」 「もう大学なんてどうでもいい。家族もいらねえ。涼太だけいればそれでいい。だから、俺がおまえを好きなのと同じくらい、俺の事好きになれよ」 ・・・ちょっと待ってくれよ。こいつ、おかしい。 「頼むから冷静になれって。オレは青が好きだ。だからこそ大学や家族を諦めてまで一緒にいたいなんて思ってほしくない。そんなこと望んでない」 「俺は、何もかも無くしても、涼太がそばに居ればそれでいい。涼太もそれくらい俺を好きになればいい」 オレは、今までわかってなかった。青にどんなに深く想われていたか、今、初めてわかった気がした。 この気持ちに、応えることが正解なんだろうか・・・。

ともだちにシェアしよう!