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第155話 一度だけのデート 2
「小林くん、私、オトコの娘は萌えないんだけど」
「すみません」
オレは今、雄大さんとのデート(?)のために、あさみさんにメイクをしてもらっているところ。
「頼める人があさみさんしかいなかったんで」
「まあいいわ。そのかわり、わかってるわよね?」
「・・・ハイ」
うう・・・。次はなんのミッションだろ・・・。こえぇ。
「色々シチュは考えてるけど・・・後で青くんにメールしとくから」
「・・・ハイ」
今回は大人しく従わないとな。しょうがねー・・・。
「できたわよ。どっからどうみても、お姉さんそっくり!さすが私!」
雄大さんが隠し撮りした美織の写真とオレを見比べて、ドヤ顔のあさみさん。
黒髪ストレートロングのウィッグに薄めのメイク、シンプルな白の膝丈のワンピースにグレーの薄手のコートとショートブーツ。
どっからどう見ても、美織以外に見えねぇ!気持ち悪っ!
「声は、ごまかせないわね・・・。風邪ひいてるって事にしてマスクしていった方がいいわ」
あさみさんのアドバイスでコンビニでマスクを買って、雄大さんと待ち合わせているホテルのラウンジへ向かった。
店へ入ると、雄大さんが窓際の席に座っているのが見えた。
雄大さんがオレの方を見たけど、美織は雄大さんと面識が無いから、知らないふりしねーと・・・。
「いらっしゃいませ。ご予約でしょうか?」
「あ、はい。佐々木です」
「かしこまりました。お連れ様、お待ちです。ご案内致します」
席に案内されて、雄大さんに軽く頭を下げる。
「は、初めまして!涼太くんと一緒に仕事させて頂いております、佐々木です!」
ひゃ~、いつも余裕ぶっこいてる雄大さんがガッチガチじゃん!・・・ダメだ、ウケる。
イヤイヤ、笑っちゃダメだろ!
「涼太がいつもお世話になっております。姉の美織です。・・・風邪気味なので、マスクしていても・・・?」
「はい!もちろんです!どうぞ!」
雄大さんのエスコートで席に座る。
やめろ~!そんな男前な事して笑わすな~!既に腹筋が痛いんですけど!
「あの、すみません。無理に誘ってしまって。でも、美織さんがご結婚されると聞いて、どうしても一度だけ会って頂きたくて、涼太くんに無理を言ってしまいました」
涼太、くん!ぶっ!雄大さんが「くん」とか!
あー、ダメだ。笑える。マスクしててよかった~。
「でも、本当にそっくりですね。目なんて涼太そのものですね。こんなに似てるのに、なんで俺、涼太のお姉さんだって気付かなかったんだろう」
イヤイヤ、今目の前にいるのは涼太そのものですよー!マジで笑わすなって!
「会社の健康診断で病院へ行った時に、美織さんを見かけました。透明感があって姿勢が良くてひとつに纏めた髪が綺麗で、白衣がすごく似合っていて。・・・一目惚れです」
真剣に話す雄大さんに、笑っちゃいけない気分になってくる。
「あ!でも、婚約者がいる美織さんとどうにかなりたいなんて、思ってないですから!本当は少しだけ思ってますけど・・・。会えてこうして話せただけですごく嬉しいです!ありがとうございます!」
「・・・いえ」
雄大さん、美織の事本当に好きなんだな・・・。
美織が雄大さんの気持ちを知ることは無いです。すみません。
オレ・・・、こんな事して、間違ってねぇのかな・・・?
「で、今日はどこまでお付き合い頂けるんですか?涼子さん?」
「あまり時間が無くて、あと少しだけ・・・」
・・・え?・・・雄大さん、今なんて呼んだ?
「風邪なんてひいてないですよね?涼子さんは。マスク取ったらどうです?」
りょうこさん・・・。やっべ・・・。オレだってバレてる・・・。
「いつ、気付いたんです、か?」
マスクを外しながら雄大さんに尋ねる。
「うーん。椅子を引いた時かな?座り方が不自然だった。いい年齢の美人女医なのに、エスコートされなれてないなんて、おかしいだろ?」
そんなとこ見てんのかよ・・・。
「で、俺を騙すなんて生意気な事してくれちゃって。とことん付き合ってくれるんだよな?涼子ちゃん?」
「え・・・イヤ・・・あの、すみません・・・」
雄大さんの余裕の笑顔が・・・コワイ!
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