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第173話 ひとつ屋根の下で 2

「俺が知らないところで、佐々木となにやってんの?」 「なにも・・・」 「居酒屋でキスされたのも、お前の口からは聞いてないけど?隠しとくつもりだった?」 「・・・ごめん」 「まだ色々出てきそうな気がすんだけどな、涼太の浮気」 「う、浮気!?」 浮気なんてしてないのに~! ・・・この前投げられたのは浮気に入るのか? 白状しろと言わんばかりに、前髪をつんつん引っ張り続ける青。 「え・・・と、どこからが浮気?」 「二人きりになったら」 「は!?それ厳しすぎねぇ!?仕事でふたりで外まわりとかあんだけど!」 今更ながら、青の嫉妬深さに恐怖を感じる。 「じゃあ、触ったり触られたりしたら、浮気」 触ったり・・・触られたり・・・てことはこの前のは浮気じゃん! 「あの!隠してた訳じゃない!・・・じゃないけど、ふ、ふざけて抱きつかれたりとかは、結構ある。でも!そーゆー人だから、あの人」 「そういう人・・・」 「そう!別に、オレにだけって訳じゃねぇから!」 ・・・たぶん。 なんでこんな言い訳しなきゃなんねぇんだ。 くっそ、まるでオレが悪いことしてるみたいじゃねーか・・・。 「涼太からは触ってねぇんだな?」 「触ってない!オレが触りたいのは・・・青、だけ、だし」 はっず・・・。耳まで熱くなってくるのが自分でわかる。どさくさに紛れて何言っちゃってんだろ。 「そっか。・・・じゃあ、飯でも食いに行く?久しぶりにハンバーグ」 「え!?いいの!?」 怒ってたと思ったのに、急にどうしたんだろう、と一瞬疑問に思ったが、ハンバーグと聞いてテンションが上がったオレは、すぐにどうでも良くなっていた。 久しぶりに行きつけだったハンバーグ店で食事をして、大満足でマンションへ帰ってきた。 「青、先に風呂入る?」 今日は気分がいいから、一番風呂を譲ってやろう! 「そうだな。一緒に入ろっか」 「え!?」 え、でも、一緒に入ったらまたヤッちゃう流れに・・・。 最近、セックスが濃すぎてつらいんだよな。 これ以上、変なとこ開発されんのも怖いし。 「涼太、俺に触りたいんだろ?俺の体、洗ってよ」 「え、オレが洗うの?・・・まあ、それなら」 触られないんだったら、いっか。 一緒にバスルームに入って、先に自分の頭と体を洗う。 洗っている間、バスタブの縁に座った青にじーっと見られてて、なんだか視姦されてるような・・・イヤイヤ、考えすぎだろ。 「お待たせ致しました~。どうぞお座りください、お客様」 オレは腰にタオルを巻いて、青をバスチェアに座らせた。 「なんでタオル巻くんだよ」 「なんとなく?シャワーかけるぞ」 青の頭からシャワーをかけて、髪を洗っていく。 青の髪、こんなに意識してちゃんと触ったの初めてかも。 結構量多いんだな、とか、ハゲる心配はまだないな、とかどうでもいい事を考えながら泡を流す。 何気なく見た鏡越しに、濡れた髪をかきあげた青と目が合って、胸が狭くなったようにきゅんとなった。 青のおでこ、全開とか・・・めっちゃかわいい。つーかかっこいい? 変態のクセに、無駄にイケメンだよな。 「なに?オレの彼氏かっこい~とか思って見とれてんの?」 「は?おめでたいヤツだな。勝手に言ってろバカ」 なんでわかんの?オレ、そんなわかりやすい? 心の中を読まれて動揺を隠しきれず、声が上擦ってしまう。 気を取り直して、スポンジを泡立てて青の広い背中を擦る。 「手で洗えよ」 「はあ?」 「イケメン触り放題だぞ。早く洗えよ」 調子乗ってんな!カッコイイとか思って損したわ! 力いっぱいスポンジを潰して泡を絞り取って、青の背中に手を滑らせる。 耳の後ろ、首、背中を洗ったところで、青が立ち上がって、オレの方を向く。 「前もちゃんと洗えよな」 「わかってるよ!」 泡を付けた手を胸に滑らせる。 けど、自分と違う色の乳首とか、厚い胸板とか、腹筋とか、さらに下半身とか、色んなものがハッキリ見えて、なんだかめちゃくちゃ恥ずかしくなってくる。 「涼太?手震えてない?」 「ふ、震えてない!てか、てめーこそ何、こここ興奮してんだよ!」 勃たせるんじゃねーよ。目のやり場に困るじゃん! 「好きな奴に体触られてんだから勃つだろ、普通」 好きなやつ・・・オレの事、だよな。オレが触ってるから、勃ってる・・・? 改めて考えてしまうと、恥ずかしいのと同時に、体の芯が疼いて熱くなってくる。

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