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第190話 罰ゲーム 4
舌の裏側を何度も撫でられて、舌先を軽く吸われ、頭がぼーっとしてくる。
もうキスだけじゃ足りないのに、今度は上顎に青の舌が這いずり回って、荒くなった息に 掠れた声を乗せてしまう。
ああ、もうホントに・・・
「きす、・・・ばっか、ねちっこい!」
腕で青の胸を押すけれど、大きさに余裕のある首輪をがっちり掴まれていて、距離をとることが出来ない。
「もう次欲しいんだ?早く触ってくれって顔してる。忍耐力が無いのは涼太の課題だな」
「わかってんなら早く触れよ!」
「涼太の望む事を、俺がいつでも汲み取って叶えてやるとでも思ってんの?」
青に突き放されて、体がベッドに沈む。
「触って欲しいなら、自分からおねだりしてみろよ」
「・・・は?」
おねだり・・・?
「あー。しょっちゅう男から迫られ慣れてる涼太は、おねだりなんてプライドが許さねぇかな?」
誰がしょっちゅう男に迫られてんだよ!
つーか、なんのプライド・・・
「俺に強請らなくても、このまま放り出せば佐々木が拾って可愛がってくれるかもな」
立ち上がった青にリードを強く引かれて、玄関まで連れていかれる。
抵抗してみても青の力に敵わなくて、裸の体がドアに押し付けられた。
カチッと鍵が開けられる音がして・・・
「冗談、だよな・・・?」
感情が読み取れないくらい無表情になっている青。
なんで、そんな顔してんだよ・・・。
もしかしてオレ、このまま青に捨てられんのか・・・?
「青・・・、なんか言えよ・・・」
青からの言葉は何も無くて、体を押し付けられたままのドアが少しずつ開けられていく。
嘘だろ・・・。
本気でマッパのオレを放り出すつもりかよ。
嫌だ。
青以外にこんな姿見られて平気なわけない。
「やだ!青っ、頼むからギュッてして!青じゃないとオレ・・・っ」
自分でも何を言っているのか分からなくて、ただ青に捨てられたくなくて、必死で訴えた。
15センチ程開いたドアが止まる。今、誰かが部屋の外を通ったら、ドアの隙間からオレの霰もない姿が見られてしまうだろう。
「涼太が俺にして欲しい事ってそれだけ?それ以上はいらないんだな?」
青の表情も声も、冷たい気がする。
・・・どうしよう。オレ、またあの時みたいに突き放されるのか?
上海へ行ったあの日がフラッシュバックする。
「青と、もう・・・別れたく、ない・・・一緒に、いたい。頼むからっ、一緒に、いて」
開いていたドアが閉まって、青の手が頬に触れて、見上げると、ふっと緩んだ柔らかい笑顔があった。
「こんな事で泣くなよ。いつもの強気な涼太はどうした?」
オレ、泣いてんのか?マジでどうしちゃったんだ。いつの間に、こんなに弱くなったんだろう。
「涼太、俺が好き?」
「・・・うん。好きだ」
「言って。俺に何して欲しいか」
そんなの、決まってる。
「ずっと、一緒にいて欲しい。オレの事、好きでいてほしい」
「・・・はぁぁぁぁ」
盛大な溜息を吐いた青は、頭を抱えて項垂れる。
嫌だ、って思ってんのかな・・・。
「ほんっとにお前は!俺の予想を軽く超えてくるよな。部屋戻るぞ」
何を予想してたんだよ。
部屋に戻り、ベッドに腰掛けた青の膝の上に向き合って座らされた。
「エロいおねだりして欲しかっただけなんだよ!なのになんでそんな、クッソかわいいおねだりすんだよ!」
あ・・・。そうか、そうだったのか・・・。
「青に触ってほしい、外も中も。弱いとこもそうじゃないとこも。そんで、なんも考えられないくらい、ドロッドロのぐっちゃぐちゃにしろよ」
青の首に手を回して、自分から口付ける。
「すっげぇ殺し文句。どうなっても知らねぇからな」
「いいよ。罰ゲームなんだろ?」
「躾の時間だっつったろーが」
熱っぽい瞳に戻った青を見て、さっきまで感じていた不安が嘘みたいに、オレの中から消えていく。
肌の上を優しく滑る指も、全身余すところ無く這う舌も、痛いくらいに強く食い込む歯や、首輪を強引に引く手も、青の全てがオレの体と心を支配していく。
甘い雰囲気が苦手だ、なんて思ったところで、簡単に青に崩されてしまう。
何回達したのかも分からなくなって、青とひとつになってるような感覚になって・・・
「あお・・・好き、・・・すきぃ」
「はぁ、こんなグズグズになるんじゃ躾になんねぇな」
呆れた言葉とは裏腹に、重ねてくる唇はひどく優しい。
「ん・・・青、あい、し・・・」
気付いた時にはもう昼で、隣に寝ているはずの青の姿はなかった。
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