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第206話 1年後 1
あれから1年が経ち、俺は涼太の父の病院で、一般外科研修中。小児外科専門医を目指すために、3年後にはまた大学に戻る事を考えている。
もちろん、最終的には病院で勤務する事が目標。
アパレル企業を退職した涼太はと言うと、少しでも病院の仕事に携わるため、医療事務を猛勉強中。
仕事を辞めた今でも、隣人の佐々木には可愛がってもらっているようで・・・(もちろん、あの夜以来、涼太に手を出して来るような事は無い)いい先輩と後輩の関係を続けている。
「青、これなんて読む?」
「遵守(じゅんしゅ)」
「じゃあこれは?」
「頓服(とんぷく)」
「ほうほう・・・じゃあ次これ」
・・・嘘だろ涼太。漢字の勉強からすんのかよ。
こいつが頭良くないのは知ってたけど、まさかここまでとは。
「えーと・・・しんりょうほうしゅうせいきゅう・・・・・・レセプトへんもどりつ・・・」
「返戻率(へんれいりつ)!」
「ああ!へんれいりつね」
先が思いやられるんですけど!
医療事務のテキストを真剣に読み込む涼太は、めちゃくちゃ頑張ってる、と思う。
その懸命な姿に心が打たれる時もある。
・・・・・・でもアホだ。
そんな涼太が可愛くて仕方ないと思う俺も、相当アホなんだろう。
「あー、むっずい!ぜんっぜん進まねぇ・・・やる気無くなった・・・」
そりゃ、漢字で躓いてんだから、進まねーだろ。
「なんかいい勉強法ねーかな・・・」
涼太は、リビングのローテーブルに広げたテキストの上に突っ伏して眉間に皺を寄せた。
「じゃあ、涼太が読みに躓いたら、俺が罰を与える、ってのどう?」
「例えば?」
「そうだな・・・デコピンとか、まあ色々」
その他も、色々。
「痛いの嫌だし、それならなんか頑張れそうな気する!」
再びやる気を取り戻した涼太は、テキストの文字を指でなぞりながら、声に出して読み始める。
「初診、再診の手続き・・・保険証の確認・・・」
順調に読み進める涼太。
「レセプト返・・・えっと、これさっきやったやつだ。へん、へん・・・りょう?りつ?」
「ブー。残念、ハイ、でこ出してー」
「くっそ・・・」
涼太は片手で前髪を上げて、目をぎゅっと閉じた。
べちっ、と音を立て中指で額を弾くと、「うっ」っと顔を顰める。
「痛ってぇ・・・あー!もうぜってぇ間違えねー!」
額を擦りながらテキストを睨む。
「へん、らいりつ!」
・・・こいつ、ダメじゃん。
「ブッブー。正解はへんれいりつでした。はい、もっかいデコ出せ」
はあ、と大きく溜息を吐いて、涼太はもう一度前髪を上げる。
さっき弾いた額が赤くなっていて痛々しい。
俺は涼太の額に近付き、赤くなった肌を舌で舐める。
「えっ?なにっ?」
パッと目を開けた涼太が、驚いた顔で俺を見た。
「俺は涼太に甘くなっちゃうからな、痛くない罰も与えてやるよ」
「マジで!?やった、ラッキー!」
両手を上げて喜ぶ涼太。・・・ほんと単純。
「じゃあ続けて?」
「ハイ!先生!」
涼太は1ページ読み終えるまでに、5回も漢字に躓く。その度に頬を抓ったり、耳を引っ張ったり、キスしてみたり・・・。
そしてまた、涼太は読み間違える。
ほんとにこいつ、社会人なのか?
「ううう。顔中痛てぇ・・・」
俺もそろそろ飽きてきたな。
涼太のTシャツを脱がせて胸の突起に噛み付く。
「いっ・・・!」
こいつの綺麗な顔が痛みに歪んでいるのを見ると、もっともっと痛めつけたくなるのは、何故なんだろう。
「涼太、間違えすぎ」
赤く膨らんだ胸の先を指で撫でると、涼太の体がびくびくと震えた。
「気持ちいいことは、すぐに覚えるのにな」
「う、うるせぇ」
顔を赤らめて俯く。
いつまで経っても、こういう所は変わらない。
「これ読めたら、涼太の好きなとこ触ってやろっかな?」
「・・・・・・びょうしょう?」
「正解。やっぱ気持ちいい事の方がいいんだ?」
「違う!青が選んだの簡単だったからっ」
否定するくせに、触って欲しくて期待してんのバレバレだし。
「どこ、さわって欲しい?」
半裸の涼太を後ろから抱えて膝の上に乗せる。
「どこって・・・別にどこでも・・・」
項まで真っ赤にして俯く涼太。なにいこいつ、何歳まで可愛いんだよ、もー・・・。
「言って。言わねーと涼太の弱いとこ全部、舐め溶かすけどいいの?」
「・・・・・・・・・じゃあ、オレの、弱いとこ全部」
わざとやってんのか天然でやってんのか分からない涼太のあざとさに、今日も俺は陥落してしまう。
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