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第207話 1年後 2
「涼太ココ?」
頸椎に沿って、涼太の項に舌を這わせる。
「・・・っ」
「違うならやめるけど?」
「そこ、でいいっ」
白く薄い肩が小さく震える。
「じゃあ、このページ読んで」
涼太を背後から囲ってテキストを広げる。
「・・・ 保険診療とは・・・保険医療機関における保険医による診療、または医療保険が適用される診療。
健康診断────・・・などは保険診療とはなりません。
・・・なお、保険診療に対して────・・・によって行われる診療は、「自由診療」と呼ばれます」
「合格。ご褒美な」
「ふぁ・・・ぁ・・・」
耳朶の下あたり、頸動脈を舌でなぞると、体を捩らせる涼太。
俺は舌を這わせたまま次の文章を指さす。
「医療と観光を組み合わせた国外医療────・・・
近年、自国の医療費高・・・、えっと、こう・・・こう・・・、やべ、これなんて読むか分かんねぇ」
「無理?諦める?ご褒美やれねーけどいい?」
「やだ!読む!んっと、こう・・・、こうじょう?」
自信なさげに涼太は答える。
・・・高騰(こうとう)だっつーの。バカ。
残念だな。ご褒美はやれないけど・・・
涼太の首筋に歯を立てる。
「痛った!・・・うっ」
涼太は、歯が食い込む痛みに耐えるため、背中を丸めようとする。
そうすることを許さない俺は、涼太の上半身を後ろから羽交い締めにしながら、噛み付いた痕に滲んだ血を舐め取った。
「あお・・・、も、やだ」
涼太の目尻に薄ら涙が見える。
・・・やば、虐めすぎたか?
「もう、勉強やだ。・・・青と、やらしー事したい」
「もうやってんだろ。勉強しながら」
掴まれた手を涼太の股間に、グッ、と押し付けられ
「オレがこんなんなってんのに、まだ勉強させんのかよ!鬼!」
涼太の股間はスウェットパンツの中で硬くなり、先端の方の布を湿らせていた。
「マジで出来の悪い生徒だな。・・・もっかい先生って呼ぶなら、してやってもいいぞ」
「はあ!?てめ、ちょーしこいてんじゃねーぞ!」
「ここで止めていいんだ?」
スウェット越しに、涼太の裏筋を撫でる。
「・・・っ、・・・・・・くそっ、・・・・・・・・・せ、んせ、い」
俯き、悔しそうに絞り出された声。
さっきも思ったけど・・・涼太が先生って言うの、クッソエロいな。
「先生に、上手にお強請り、してみな?」
「~~~・・・っ!・・・・・・・・・・・・オレに、えっちな事、して・・・先生」
はは、涼太の耳も肩も、真っ赤じゃん。
そんなに恥ずかしい思いまでして、俺としたいなんて・・・あー、萌えるしかない。
ベッドへ移動して服を全て脱がせると、涼太が縋るようにキスを強請ってくる。
涼太の唇も舌も吐息も、俺にとっては飴玉よりも甘くて、チョコレートよりも蕩けるスイーツの様だ。
「あお・・・」
「今日は名前呼ぶの禁止。ホラ、先生だろ?」
「おまえなぁ・・・。仕事で嫌ってほど呼ばれてんだろ、先生、なんて」
「それとこれとは違うんだよ。つーか、他の誰でもない、涼太が呼ぶからいいんだろ。卑猥な感じがして」
「・・・・・・先生、ド変態だな」
俺に組み敷かれた涼太が、困惑しながら上目遣いで見てくる。
「・・・やべえ、今の結構キた」
涼太の両腕を引きながら腰を強く打ちつける。
「ぁああっ!あっ、あっ、あっ、あっ」
結腸を責めると、涼太は「あ」しか言えなくなる。
突き上げる度にビクビクと体を跳ねさせ、何度も何度も中を痙攣させる。
定まらない焦点で時折俺の瞳を見て、溜めた涙が零れて、苦しそうで辛そうで・・・
だけど熱い内壁は、もっともっと、と絡み付いて甘えてくる。
「あおっ、あ、あっ、あっ、・・・も、や・・・っ、せん、せ・・・」
「・・・っ・・・」
涼太の「先生」に、思わず達してしまった・・・。
腰の動きを止めても、中に入ったままの俺から搾り取るように、涼太はぎゅうぎゅうと締め付けてくる。
「俺がド変態なら、涼太はド淫乱だな」
「あ・・・んっ、先生・・・も、おわり・・・?」
呼吸を乱したままの涼太が、両手で俺の頬を包み込む。
潤んだ瞳と上気した肌に誘惑されて、またすぐに涼太が欲しくなる。
俺は、涼太の両手首を片手で纏めて頭上のベッドに縫い付け、顎を掴んで咥内を貪る。
どれだけ繋がっても足りない。
独り善がりだった頃とは違う渇望が俺の中にある。
求め合って、奪い合って、満たされて・・・またそれの繰り返し。
涼太も同じだと知ったから、俺はもうその渇望を恐れる必要はないんだ。
これからも俺は、涼太しか愛せずに生きていくんだろう。きっと。
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