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第209話 happy wedding 2

「さんきゅー」 ブーケを手に取り微笑む涼太は、今日の主役である美織さんよりも綺麗だ、と思う。 「青って何気ロマンチストだよな・・・オレなんかに惚れてなかったら、絶対モテてたのにな。もったいない」 俺が涼太に惚れてなかったら、絶対モテてたのはお前の方だと思うけどな。・・・涼太の恋路を邪魔してたのは俺だし。 「その分、涼太が幸せにしてくれるんだろ?」 「もちろん。・・・あ!そう言えばさ、男どうしでも妊娠できるらしいぞ!」 は? 「なんかー、オレたちは『べーた』っていうらしい。んで、『おめが』っていうのになれれば妊娠できるんだって」 は?? 「『べーた』でも、突然『おめが』になる可能性もあるから、望みを捨てんなって言われた」 は?え?・・・涼太何言い出しちゃってんの? ・・・・・・もしかして 「なあ、それって誰に・・・」 「あさみさん」 やっぱり!! 「あのな、涼太・・・それって、あさみさんお得意のBLの・・・」 無表情に戻った涼太の瞳だけが、キラキラと輝いて・・・希望に満ち溢れているのがわかる。 どこまでバカなの?そんな人、現実に見たことあんの? ねえ涼太くん、マジで大人なんだよね? 「涼太、いいかよく聞け。それ多分あさみさんの・・・」 願望なだけだから、と言いかけて・・・ 「『ひーと』、オレにも来るかな?」 涼太の瞳があまりにも純粋に輝き過ぎている・・・! ・・・言えねー・・・。 こんなに無垢な涼太に言えるわけない。それ、BLの架空設定だぞ、なんて・・・ 「オレ 青に何回もうなじ噛まれてるから、青とオレは『つがい』なんだって、そんでそんで・・・」 ブーケを抱えたまま、涼太はあさみさんから仕入れた知識を一生懸命俺に語る。 「青が医者でよかった~!『よくせいざい』処方してくれよな!」 つーか、俺、専修外科だし関係ねぇだろ多分。じゃねぇ! 「オレ、青のために『おめが』になれるように頑張るからな!妊娠、できるといいな~」 「あ、うん。ソウダネ・・・」 あさみさん、壮大な誤爆すんなよマジで・・・。 美織さんの結婚式の日に、涼太は何を語って俺は何を聞かされてんだ。まったく・・・。 披露宴も無事に終わり、夫婦揃って医師である美織さん達は、その足で短い新婚旅行のため空港へと向かって行った。 「なあ、青?・・・明日、仕事だよな?」 式場からの帰り、タクシーの中、膝の上にのせた指を涼太がぎゅっと握ってくる。 「仕事だけど。どうした?」 「・・・うん、あのさ・・・なんか・・・来たかも」 来た?何が? 「『ひーと』・・・」 「はあ!?」 来るはずねーだろ!そんなもん・・・ 思わず涼太の顔を見ると、虚ろな目で呼吸を荒らげて、頬は真っ赤に上気していた。 「『ひーと』になると『おめが』は『あるふぁ』の精子が欲しくて堪らなくなるって・・・だから・・・絶対そう」 頼むからその呪文みたいな言葉を並べるのはやめてくれ。 つーかそれ、酒飲み過ぎて酔っ払ってるだけだろうが! 「おれ・・・あおのせーし、欲しい」 酔っ払って大胆になっている涼太は、タクシーの中だというのに、俺の首に手を掛けて自分の方へ引き倒そうとしてくる。 ちょいちょいちょい!ドライバーさんがバックミラー越しにめっちゃ見てるし! 「青のせーし、いっぱいいっぱい欲しいから・・・寝かせてやれないかも・・・『ひーと』だから」 「イヤ、涼太それ絶対違うから。そもそも何だよ、ひーとって!」 涼太の腕を外そうと試みるが、更に強い力でしがみついて来て離れようとしない。 可愛い。どちゃクソ可愛いけど・・・。真実を教えた方がいいなこれ。 「あのな、その、ひーとだかミートだか、おめがだかガメラだか知らねぇけど、それ作りもんだぞ、きっと」 「青はっ、オレとのこども、欲しくねーの?ずっと気になってた・・・・・・オレは、限りなくゼロに近い可能性でも信じてんの!青のためならできるって!」 限りなくゼロに近いどころか、可能性はゼロなんだけど・・・。 「涼太のこどもが欲しくないわけ無いだろ。けどな、男女でも難しいケースだって珍しくないんだ。子供ができるって涼太が信じてるなら、俺も信じるから。だから焦んなくていい」 「・・・うん」 こんな非現実的な話に付き合うなんて、我ながらどうかしてるな。

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