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第8話

「しないよ。俺は、しない」 優大の掠れた声に、透は目を丸くして 「しないの?どうして?……あ、そっか。気持ち悪いんだね、僕が」 「違うっ。そうじゃない。ここ泊めるからってそういうことしろなんて、俺は言わない。ゲイじゃないんだろ?本当は男とするの、嫌なんだろう?」 透は笑いながら首を竦めて 「気持ちいいことするのは嫌いじゃないよ。腹の出たじじいに、変態プレイされるのはちょっとしんどいけどさ、あんた……イケメンだし、若いしさ。あんたとなら楽しめそうじゃん?」 あっけらかんと言い放つ透に、優大はまた言葉を失った。 ……ゲイじゃないのに、俺と寝るのは平気なのか? 「なあ、しよ?ただで泊めてもらうの、なんか落ち着かないし」 「……し、しないよ。俺は君のパトロンじゃない。ここに一緒に泊めるぐらいで見返りを要求したりはしない」 優大は必死に反論すると、透の身体を押しのけ、ベッドの奥に横になり布団をひっ被った。まだ下腹は熱を持ち疼いていたが、透の白くて綺麗な細い身体は魅惑的だったが、こんな風に彼を抱くのは、どうしても嫌だった。 「……変な奴……」 透はボソッと呟いてしばらく動かずにいたが、やがてゴソゴソと布団の中に入ってきて、すぐ隣で横になった。 ぴったりと密着した彼の腕の温もりにドキドキして、優大はなかなか寝付けなかった。 自分にはこの仕事は向いてないと、随分前から気づいてはいる。でも、他に何かやりたい仕事も出来る自信もなくて、優大はただひたすらストレスと闘いながら、仕事を続けていた。 優大がやっているのは、絵画の販売営業だ。 絵画と言っても、人気の現代作家の原画をシルクスクリーンやリトグラフにした複製品だ。数量限定で、作家のサインとエディションナンバーが入っているので、ポスターよりはかなり高額な商品だった。 地方のショッピングセンターの催事場を5日間借りて巡業するから、仕事は全て出張になる。 今回の会場では、あの日以来、透の姿は見かけなかった。昼間にちらっと見かけた時は、うちの商材の搬入搬出や設営撤収を手掛ける業者の制服を着ていたから、きっとその部署所属のアルバイトなのだろう。

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