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第13話
そんな風にして、出張の度に会えればどちらかが都合をつけて同じホテルに泊まり、身体を重ねる。
そういう関係が3カ月ほど続いたある日。
「透くん。君に話があるんだ」
緊張に顔を引き攣らせながら、優大が話しかけても、透は雑誌を見ていて顔をあげてくれない。
「改まって、何?」
「俺、今の仕事を辞めて、転職するんだ」
透はようやく顔をあげた。驚いたように一瞬目を見張り、だが興味なさそうにすぐに目を伏せて、手元の雑誌を捲った。
「ふーん……よかったじゃん。あんた、あの仕事向いてないよ。性格良すぎるし、お人好しだし」
優大はそっと深呼吸してから
「それでね。もしよかったら……透くん。俺のアパートに、来ないか?」
「は?」
透は再び顔をあげ、こちらをまじまじと見つめた。
「君、あの出張の仕事がない時は、ネカフェとか、その……そういうことをする相手の所に、転がりこんでるって、言ってたよね?だったら、俺のアパートで一緒に……住まないか?」
ようやく言えた。
優大はほっとして、強ばった顔の力を抜く。
「……それ、本気で言ってんの?」
「もちろん。本気だよ」
透は探るような目で見つめていたが、苦笑しながら首を竦めて
「ふーん……あんた、そんなに僕の身体、気に入ったんだ?」
「身体だけじゃないよ。君と一緒にいると、すごく気持ちが落ち着くんだ」
透は首を傾げて目を逸らした。
「いいけど?僕は別に。誰んとこに行っても、やることはおんなじだし」
こうして、透は優大のアパートにやってきた。
口を開けば皮肉屋で憎まれ口ばかり叩く彼だが、一緒に住み始めてもまったく手が掛からない男だった。まるでひょっこり住みついた猫のように、お気に入りの場所を見つけて静かに寛いでいる。
一人暮らしの気楽さに慣れていた優大だったが、透の存在は邪魔にならないどころか、今まで満たされなかった自分の中の空虚さを、そっと埋めてくれる気がした。
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