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第15話
透は沸いたお湯にパスタを入れて、菜箸でかき回しながら淡々と話を続けた。
「あんたっていいな。普通の家庭で普通に育った感じがしてさ。
僕、前にも言ったけど両親が離婚して母親と暮らしてた。あいつには僕の父親の前にも旦那がいてさ。僕の上には歳の離れた父親の違う姉が2人いたんだ。
母親は男好きで役者の追っかけしててさ。まだ手のかかる僕のことが邪魔だった。僕の面倒を押し付けられた姉2人も僕のことが嫌いでさ。いつもいじめられてたんだよね」
淡々と語る透の過去が壮絶過ぎて、優大は相槌も打てずに黙って聞いていた。
「まともに食事ももらえないから、僕はいつも腹が減ってて。家ん中漁って食えるものは何でも食ってた。でもあいつ、すげえ見栄張りでさ。外にいる時は僕のこと、可愛がってるフリだけしてたな。
僕が小学校4年の時、母親が新しい男を家に引っ張りこんだんだ。姉たちはそいつが嫌いで、それぞれ自分の男の家に逃げていってさ。でも僕は優しくしてくれるその男に懐いてた。いつも美味しいもの買ってきて食わせてくれたしね。
でもそいつ……すげえ変態だったんだよね。まだガキでそれも男の僕にさ、裸にしてベタベタ触ったり、自分のアソコ触らせたりさ。そのうち夜中に僕の部屋に来て、無理やりレイプされた」
「っ。透くん、」
「でも僕はそいつに懐いてたし、嫌われてまた食いもん貰えなくなるの怖くてさ。そんなことされてるって周りにバレるのも怖くて、ずっと大人しく言うこときいてたんだ。
でもある日、母親にそれ、バレちゃってさ。怒り狂ってすげえ折檻された。
田舎の農家だったから、庭にデカい蔵があったんだよね。真っ暗なそこに何日も裸で閉じ込められてさ。腐ったカレーの鍋持ってきて、それ全部食ったら出してやるって言われて……泣きながら食って、ものすごい下痢してさ。救急車で運ばれて、ようやく、僕が何されてたか周りの人間も気づいてくれて。退院した後は親と引き離されて施設で生活してた」
「透くん、ごめん、もう、いい、もういいんだ」
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