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第2話
「何してるんだ!やめろっ。あ、おまわりさん、こっちです!早くっ」
誰かが大声で叫んでいる。
男たちの動きがピタッと止まった。
「なんだ、てめえは」
男たちのうちの2人が立ち上がって、叫んだ男の方へ向かって行く。
透は首だけ何とか回してそちらを見た。
あの声は……
「はあ?おまわりなんて何処にいるんだよ! 口から出まかせ言ってんじゃねーぞ!えぇ?」
「誰かっ、来てください!人が襲われてるんです!警察に通報してください!」
「コラふざけんなよ!黙れ!」
男の声があまりに大きく響いて、透を押さえつけていた3人も慌てて立ち上がり、そっちへ向かった。
透はのろのろと身を起こし、脱がされて散らばった服を拾い上げて身体を庇う。
「透くんっ、今のうちに!逃げるんだっ、あっ」
やっぱりあの声は優大だ。
間違いない。
優大だ。
……なに、やってるんだよ。なんで、ここに?
優大は男たちに取り囲まれながら、必死に叫んでいたが、男の1人に顎を掴まれ、壁に押さえつけられた。
「いい加減にしろよ!てめえ、デカい声出してんじゃねーぞ」
「俺らはあいつのパトロンに金払ってんだよ!邪魔すんな!」
不意に、けたたましいサイレンが鳴り響いた。男たちは息をのみ、慌てて辺りを見回す。
どこで鳴っているのか分からないが、その音を聞きつけたのか、店の向かいの雑居ビルの上の方の窓が開いて
「うるさいわね!何騒いでんのよ!警察に通報するわよ!」
女の喚き声が響き渡る。男たちは顔を見合わせ、舌打ちをすると
「てめえっ。覚えてろよ!クソが!」
男の1人が忌々しげに優大の腹を膝で蹴りあげてから、路地のほうへと逃げ出した。他の男たちも悪態をつきながらその後に続く。
優大は腹を押さえてその場にしゃがみ込んだ。透は慌ててシャツに腕を通しながら、優大の傍に駆け寄った。
「おいっ、大丈夫かよっ」
しゃがみこんで覗き込むと、優大は痛そうに顔を顰めながら
「だい、じょうぶ。透くん、君の、方こそ」
「僕は平気。それよりこの音、どこで、」
透が辺りを見回すと、優大はポケットに手を突っ込んでスマホを取り出した。
「これ。スマホの、非常用ベルの、アプリ」
言いながら、アプリケーションを閉じた。
ピタッと音が鳴り止む。
辺りに静寂が戻った。
「あんただったのか……」
透が唖然として呟くと、優大はまだ痛そうに腹を押さえながら苦笑して
「もしもの時にって入れておいたんだ。役に立って、よかった」
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