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第5話

「……怖かったんだ、僕。あんたが優しすぎて、あの部屋も優しすぎて、怖かった」 自分の言っていることがおかしい。分かっているのに、言葉が溢れて止まらない。 「透くん、怖いって、どうして?」 「わかんないよ、自分でも。どうしてかなんて、わかんない。ただ無性に怖くて。僕がいちゃいけない場所だって、思ったんだ。あんたもあの部屋も、僕なんか薄汚れてて場違いだ。僕がいたら、汚しちゃうじゃん」 不意に、手をぐいっと引っ張られた。 「うわ」 勢い余って前のめりになり、そのまま優大の腕に抱き締められた。 大きくて温かい、懐かしい腕の中に。 「透くん、君は、薄汚れてなんかいないよ!」 優大の腕に力がこもる。強く抱き締められて、胸がぎゅっと苦しくなる。 「君がいてくれて、俺は毎日幸せだった。君が望まないなら、セックスなんかしなくてもいい。ただそばで、笑ってくれているだけで、俺はすごく幸せだったんだ」 優しい男が、またしても信じられないことを言う。 この男は優しすぎるのだ。 自分にはもったいないくらい、眩しすぎた。 「嘘」 「嘘じゃないよ。俺は、臆病だったんだ。傷つくのが怖くて、君を傷つけるのも怖くて、だから、君が好きだと言いたいのに、ずっと言えずにいた」 「う…嘘だ。あんたが僕のこと、好きなわけないじゃん」 「どうして?俺は君が好きだよ。やっと言えた。君がいなくなって、俺は苦しかった。後悔したんだ。こんなに好きなのに、どうしてちゃんと好きって言えなかったんだろうって」 透は、優大の背中に腕を回して、縋り付くように抱きついた。 自分を好きだと言ってくれている。 ダメだ。信じられない。 そんなはずはない。 だって自分は…… 「僕みたいな訳ありなやつ、好きになっちゃダメじゃん。あんたはまともな人間なのに、好きになったら、ダメだろ」 「君が好きだよ、透くん。もし俺が……あの部屋が、嫌いじゃないなら、戻って来て欲しい。君ともっと一緒にいたい。君がいないと寂しくて辛い。一緒に、いたいんだ」 透は、震える吐息を漏らした。 優大の言葉は、やっぱり信じられない。 でも、嬉しい。 出来ることなら信じたい。

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