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三の1
ここ数日教室の窓からずっと外を見ていた。
雨はなかなか降らない。まだ梅雨なはずなのに。何故だ。憂鬱だ。
雨が降らずに五日も経った頃には想いがどばどばあふれて食事も喉を通らなくなってきていた。風邪はだいぶ良くなった。でも少しも元気じゃない。世界が煤けて見える。
思うのは彼のことばっかりで。
井戸くらい深い溜め息を吐いていたら、前の席のダイゴが慰めるように俺の肩を叩いた。
「元気出せよ」
彼は三個目のジャムパンを食べながら弱き者を慈しむような顔で俺を見ていた。
「いいことあるって」
腹立つわぁ。はあ。
またあの後ろ姿を見たい。透明なベールに雨粒を弾かせて後れ毛を湿った肌に張り付けた……うるうるの唇の星が跳ねるような瞳の。笑った時に見えるえくぼが見たい。懲りないけど触れたい。待ち遠しい。
ねえ。会いたいんだけど。毎日あのベンチを通り過ぎるんだけど。
なんでいないんですか。
妖精さん。
俺が傷つけたから? もう二度と会えない? じゃあせめてごめんって言わせて欲しい。
いや……当たり前だよな。襲われたのと変わんねえじゃん。俺、犯罪者だ。
「サヤカから聞いたんだけど、カリン、お前のこと気にしてるみたいだよ」
ダイゴは俺にしか聞こえないような声で言う。
なんか心が重い。青空がこんなに憎いなんて。
「ああそう」
お天気続きじゃ敵わんよ。
「反応薄っ」
「え?」
「せっかく元気になるお知らせをしてやったのに」
「はあ? ……お前になにが分かるんだよ」
「分かんねえけど。そんなにカリンのこと好きだったんだな」
うるせえなあ。
なんか泣きそう。苦しい。最低だ。最悪だ。
紫。
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