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第9話(中編)
「…………」
どこからか降ってきた紙を拾い上げて、絢瀬さんはピタッと固まってしまった。
「絢瀬さん?紙、またなにか書いてあったんでしょう?なんだったんですか?またキス?暗号とか?」
「……いや、何も書いてない」
「えっ、でも流石に何も書いてないことはないですって」
「ほんとに何も書いてなかったから!ほら、お前もどっかドア以外で開きそうなところ……ってオイ!」
紙を覗き込もうとすると光の速さで避けられてしまう。
明らかに何かを隠そうとするこの人に、うっすらとあの日の夜の嗜虐心を煽られる。
(あー……思いっきりいじめたい。)
どんなに絢瀬さんが俺を見ないふりしてても、距離が縮まれば少ししゃがんでいた絢瀬さんは自然と上目遣いになるわけで。
「ちょ、もう…っまじ無理だって……っ!」
もう疲れたから嫌だとドスドスと肩を叩かれながら、まだ赤く染ったままの唇を塞いだ。
「んっ、ふ……ぁ…」
そしてあっという間にへたぁと膝からずり落ちた絢瀬さんの手から紙を盗む。
「ぁ……っ、」
『空イキするまで出られない』
………………なるほど。
絢瀬さんはこれが嫌でこんなに必死に隠してたのか。
この世の終わりみたいな顔して項垂れたままの絢瀬さんに目線を合わせ、まるで何の企みも無いような笑みを向ける。
それだけで案外ちょろい絢瀬さんの顔から絶望の色が消えかける。
「これ、相当負担かかるし絢瀬さんには辛いですよね……」
でもなぁ…。
愛しい恋人のこんな焦った顔見ちゃったら、もっといじめたくなってしまうのは人としてのティピカルなのか、俺が腹黒だからなのか。
それとも相手が絢瀬さんだからなのだろうか。
「でも、このままだと閉じ込められたままですよ。すぐ終わらせるし、なるべく優しくするのでちょっとだけ我慢して下さい」
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次、Rです!
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