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に
りつの好きなもの。
チョコレート、ケーキ、アイスクリーム、金平糖。
蜂蜜をたっぷりかけたふわふわのホットケーキ、生クリームが乗ったプリン。
砂糖をたくさん入れたホットミルクと、マシュマロを溶かしたココア。
だからだろうか、りつからは常に甘い匂いがするし、りつの体はどこも甘い。
りつの嫌いなもの。
痛いこと。
叩かれるのも、蹴られるのも、殴られるのも、頭から熱湯をかけられるのも、煙草を体に押し付けられるのも、無理矢理体を開かれるのも、全部全部大嫌いで、今でもその恐怖に怯えている。
それから、『死にたい』が口癖で、何度も何度も自傷行為を繰り返す。腕や手首を切りつけたり、強く引っ掻いたり、頭を壁や床に打ち付けたり、一番酷い状態の時には首を吊ろうとしていたこともあった。
「…最近は、落ちついてきてると思ったんだけど。」
涙の跡を残したまま、穏やかな顔で眠っているりつ。服も全て着替えさせて、ベッドまで抱いて運んできた。
手当を終えた後のりつは、やはり不安定だった。『もうしない』と何度も約束した自傷行為をしてしまったことを悔やみ、パニック状態になって謝罪の言葉を繰り返す。
『ごめんなさい。』と泣きじゃくるりつを、責めることなんてできないし、責めるつもりも毛頭ない。りつはやりたくて自分を傷つけているわけじゃないし、何より油断していた自分にも非はあった。
先程飲ませた薬のお陰で眠っているりつは、暫く目を覚まさないだろう。
りつが目を覚ました時に、あんな部屋見られたらきっと気に病むだろうから今のうちに片付けておこう、とゆうじは立ち上がって寝室から出た。
リビングに散らかっている壊れた物は、全て処分する。りつが間違って触りでもしたら大変だ。血がついてしまったカーペットも、りつが引き裂いたカーテンも全て捨てる。また新しいものを、りつと一緒に選べばいい。だけど、りつがが大切にしていたぬいぐるみだけは、捨てるのを躊躇った。この家は、ゆうじがりつに贈ったぬいぐるみで溢れている。動物を模したものもあれば、巷で人気のキャラクターのものもある。りつはどれもお気に入りで、大事に大事にしていた。
「…捨てたら、泣くかな。」
床に転がるぬいぐるみだったものを眺めながら、暫く考える。
このくらい、新しいのなんていくらでも買ってあげられる。
だけど多分、そういうことじゃないんだろうな。りつは、優しい子だから。
少し迷ったが、ゆうじはそのぬいぐるみをゴミ袋ではなく、リビングの棚の奥にしまった。
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